自分を研究し続ける。鈴木愛理のキャリア18年を支えた、プロの美学。


どんな風に自分をプロデュースしたらファンが増えるか色々と研究した中で、特に変化があったのは自分でメイクをやり始めた頃です。

ハロー!プロジェクトって、高校生に上がるとコンサート中のヘアやメイクは基本全部自分でやるんですよ。だから、見た目の部分でどう見られるかは全部自分次第。自分ができなかったら自分が輝けないだけ、という状況。

否が応でも魅せ方を研究せざるをえない環境で、メイクや髪型をセルフプロデュースするようになると、それまで男性中心だったファンの中に女性が増え始めたんです。自分が女性から憧れてもらえるなんて思いもしなかったので、すごく驚きました。

お世話になっている編集者さんがその様子を見て、女性ファン向けにスタイルブックの出版を提案してくださったことが、今のモデルとしての活動に繋がってます。



「コンプレックス、ありがとう」

モデルの撮影現場は、アイドルのそれとは全く別物。最初は正直戸惑いましたね。身体の絞り方や現場に入るまでのコンディションの整え方も違えば、ポージングや自分の表現も違う。アイドルとしての雑誌や写真集の撮影の経験はあったものの、「最初の一歩」として、またイチから研究し直しました。

自分研究は、どんな場面でも行っています。私にとって自己研究のきっかけにしているのが、コンプレックスです。コンプレックスってないほうがいいかもしれないけど、あるから改善が生まれる。改善をしてきた道のりは、自分の唯一無二の体験になるじゃないですか。それが自分の自信に繋がるし、人生ってその繰り返しかなって思ってます。

コンプレックスを乗り越えていく体験自体をみんなで共有することで、世の中から共感を得られたり、伝えられたりすることも増える。「コンプレックス、ありがとう」って感じです(笑)。

でも研究過程は、成功するまであんまり見せたくないです。身体を絞ってるときも、完成してからじゃないと過程をあまり見せたくなくて。初めて曲の振り付けを教わるときも、一旦その場で覚えたら、レベルを突き詰めるのは家に帰って一人のとき。家で壁や電気に手をぶつけながら踊っています(笑)。

成果があっての過程ならいいのですが、過程だけ見て「これでいいんだ」と思われると、それは周りにも申し訳ない。そう思ってしまいます。努力している姿やできない姿を人に見せることへの抵抗は、自分の美学みたいなものですかね。プライドにもなってるけど、そのおかげで自分の背筋が常にシャキッとしているのかな、と。
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文=萩原愛梨 写真=小田駿一

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