ヴェネツィア・ビエンナーレを制した巨大アート、「6対の手」が語るものとは


──このような大規模な作品を制作するのは複雑な作業だと思いますが、おもにどういう過程がありますか。

ビエンナーレが始まる約18カ月前にこの作品の着想を得、試作を重ねたあと、ここ数年いつも僕をサポートしてくださっているヴェネツィア市庁にプレゼンしました。そこで関係者の方々からの承認を得たあと、ロンドンのハルシオン・ギャラリーから経済的な支援を受けて、プロジェクトを開始しました。

開催5カ月前、まだ展示に関して最終的な許諾が出ず、展示場所が未定だったのですが、それでも制作を開始したんです。そうしないともう間に合わない状況だったので。

数週間前になって全ての許可が出た段階で、ある程度技術的な修正を加えたうえで、作品を設置しました。このプロジェクトのために、異なる専門技術を持ったスタッフが約350人も参加していたので、まさにチームワークの賜物です。展示会場にもとても満足しています。ヴェネツィアの歴史を振り返れば、会場であるアルセナーレから多くの船が航海に旅立って、文化的な交流に貢献したわけですからね。

──ヴェネツィアは、現在もコンテンポラリーアートの重要な役割を担っていると思いますか。

もちろんです。ヴェネツィア・ビエンナーレは世界でもっとも重要なものですし、ヴェネツィアはずっと大きな舞台でありつづけています。僕自身、母がヴェネツィアの人で妻もここで生まれていますから、この町との縁は深いんです。僕にとって2番目の故郷ですね。

──ビエンナーレ終了後、「Building Bridges」はどうなるのでしょうか。

できれば、この作品がこのまま生きつづけてほしいと思っていますけどね。僕には2つ夢がありまして、あ、でも今は自分の中に留めておきます。

──ビエンナーレ2021へ向けて、すでに何かアイデアはありますか。

ええ、でも今は、その作品は手をかたどったものではない、ということだけお伝えします。これまでと違うことをしたいですね。

──自身の作品ではメッセージが重要とのことですが、これはストリートアートとも非常に重なります。ストリートアートについてはどう考えていますか。

とても好きですし、よく観ています。すべてのアーティストにギャラリーで展示するためのバックアップがあるわけではないですし、一種の芸術形態として必要なものだと思います。それに、なかには直接的で非常に強いメッセージを訴える力のある、ものすごくすばらしい作品もありますからね。

翻訳=大村紘代 編集=石井節子 写真=Forbes Italia提供

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