キャリア・教育

2019.07.28 17:00

映画は怒りと感動で撮る。NY在住ドキュメンタリー監督の「パッション」


『おクジラさま』を撮ったのも私自身の心が強く動かされたからです。

2010年10月11日、和歌山県太地町でイルカ漁が行われた日、たった一日でとんでもないことが次々と起こりました。

海外メディアが押し寄せたり、海上保安庁が出動したり、外国人活動家が沖に飛び込んだり、シーシェパードの代表者が捕まえたイルカを買い取りたいと言い出したり、日本の右翼団体のメンバーがシーシェパードと交渉を始めたり……すべてが撮れた時にこれは映画になると確信しました。

━━ドキュメンタリーを撮るパッションは、どこからわいてきますか。

心の揺れ動きですね。それは『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』のときは感動で、『おクジラさま』のときは怒りでした。その感動や怒りがどこから来るのか、ドキュメンタリー制作はその答えを探す旅なのです。撮り始める時、つまり旅が始まるときはいつもワクワクします。

琴線に触れる物事って、普通に生活しているだけでたくさんあるんです。「これ撮りたいな」「これは映画になりそう」と思うことがいっぱいある。その中でも、深くぐさりと心に刺さったものが長編映画になる。

リアルな世界のリアルな出来事、人間が一番おもしろいと感じます。ドキュメンタリーの視点で見てみると、この世界は魅力にあふれているんです。


佐々木芽生(ささき・めぐみ)◎北海道出身。映画配給会社勤務を経てインドを放浪し、その後はニューヨークに在住。2008年、ドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』で監督デビュー。世界各国の映画祭で数々の賞を総なめに。17年には『おクジラさま〜ふたつの正義の物語』で捕鯨問題に切り込んだ。

構成=崎谷実穂 イラスト=Willa Gebbie

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