空港で無料SIMカードを外国人に配りまくる。わくわくするロジック

WAmazing代表取締役CEO・加藤史子

今年5月にシリーズBラウンドを実施し、東急電鉄をリードに9.3億円を調達したWAmazing。これまでに計19億円に上る資金調達を実施した。CEOの加藤史子は18年勤めたリクルートを辞めて2016年に起業。リクルート時代から新規事業開発、特に旅行業界に深く関わってきた。

WAmazingが展開するのは訪日外国人観光客向けのインバウンド・サービス。国内22の空港で「無料SIMカード」の配布をしている。外国人観光客は来日前にアプリをダウンロードし、会員登録すると、日本の空港に設置された自販機型の機械でSIMカードを受け取ることができる。追加のデータ通信料金やアプリを通じた宿泊施設や観光サービス、交通機関の予約手数料が同社の収入になる仕組みだ。

加藤が目指すのは、「都会に仕事を探しに行かなくても、愛着のある故郷で好きな仕事ができる社会に日本がなること」だ。実は、WAmazingの事業もこの夢に深く関わっている。夢を実現するために、徹底的にロジックで考える加藤のわくわくを探った。

──無料のSIMカードを配布しようと思ったきっかけについて教えてください。

インバウンドの事業を始めたいと思っていて、テーマパークなど、さまざまな観光事業者にマーケティングの話を聞きに行きました。すると、皆さんが口々に「砂漠に水を撒くようなものだ」と言うんです。

考えてみると、中国には約14億人、ASEANには約6億人、インドには約13億人がいますが、もっとも日本に来ている中国人でさえ約800万人。人口に対して1%以下です。お金をかけて現地でテレビCMを流しても、ほとんどの人は日本には来ないのでとても効率が悪い。それを聞いて確かに砂漠だと思いました。

ならば、砂漠の中から砂鉄を探す磁石は何か、と考えました。ほとんどの砂粒は無視して、砂鉄となる訪日客だけに届ける。日本の空港でしか手に入れられない、通常3000円程度のSIMカードなんて本国にずっといる人には無意味ですが、砂鉄を集める磁石としてすごく効率的ではないかと考えました。
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構成=成相通子 イラストレーション=Willa Gebbie

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