ノルウェー出身の海運王で、英国に居を構える最も裕福な富豪の一人であるジョン・フレドリクセンが、ロンドンの豪邸を売却すると英紙タイムズが報じた。英国では超富裕層が国外に転出する動きが加速している。フレドリクセンは先月、「英国は地獄に落ちた」との表現で経済環境の悪化を嘆いていた。
フレドリクセンはすでに十数人いた使用人を解雇し、チェルシーに保有する築300年のジョージアン様式の邸宅「オールド・レクトリー(The Old Rectory)」の非公開内覧を手配していると伝えられている。英国退去の意思は固そうだ。
建物面積2787平方mのオールド・レクトリーは英国でも指折りの高級住宅で、資産価値は推定2億5000万ポンド(約500億円)。寝室10室と大広間、私有地としてはロンドンで3番目に広大な約8100平方mの庭園が備わる。歴史的建造物としても名高い。
フレドリクセンは6月、英国に居住しているが永住者ではない場合(非永住者)の海外所得に対する税制優遇措置の撤廃を批判。ノルウェーのメディアE24に対し、これを理由にアラブ首長国連邦(UAE)に移住する予定だと認め、「西側世界全体が衰退の道をたどっている」と述べていた。
今年初めには、所有する民間海運会社の1つ、シータンカーズ・マネジメントのロンドン本社を閉鎖していた。
英国を脱出する富豪たち
英国では超富裕層の国外転出の動きが止まらない。投資移住コンサルティング大手の英ヘンリー&パートナーズによると、英国は富裕層の流出数が世界最大で、2025年は投資可能資産を100万ドル(約1億4700万円)以上保有するミリオネア1万6500人が国外へ移住する見通しだ。
英国のミリオネア人口は世界5位だが、直近10年間の増加率は世界10大富裕国で唯一マイナスとなっている。ヘンリー&パートナーズは、相続税の引き上げ、私立学校の授業料への付加価値税15%課税、居住地に基づく課税制度の変更など、一連の税制改革により高純資産投資家にとっての英国の魅力が薄れていると指摘する。
最近英国を去った富豪には、連続起業家で投資家のクリスチャン・アンガーマイヤーや、英サッカーチームのアストン・ヴィラFCのオーナーであるナセフ・サウィリスら、資産10億ドル(約1470億円)以上のビリオネアも含まれている。



