テクノロジー

2019.06.26 16:30

3Dプリンターの米カーボンが280億円を調達、研究開発を加速

カーボン共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジョー・デシモーネ(Photo by Scott Olson/Getty Images)

カーボン共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジョー・デシモーネ(Photo by Scott Olson/Getty Images)

3Dプリンターのユニコーン、米カーボン(Carbon)は6月25日、シリーズEラウンドで2億6000万ドル(約279億円)以上を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドを主導したのは、マドローン・キャピタル・パートナーズとベイリーギフォード。カーボンの評価額は24億ドルを超え、ベンチャーキャピタルの支援を受ける3Dプリンター関連企業では最高額となった。今後は株式公開により、市場での資金調達を目指すと見込まれている。

産業用途の拡大に伴い、3Dプリンター技術を扱う企業は急成長を続けている。2013年創業のカーボンとその保有する「デジタルライト合成(Digital Light Synthesis)」技術が投資家の高い注目を集める理由の一つは、アディダスとの提携だ。

カリフォルニア州レッドウッドシティの本社でフォーブスのインタビューに応じた共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジョー・デシモーネは、アディダスのランニングシューズ「アルファエッジ 4D」を履いて登場。価格300ドルのこのシューズについて、「毎週1回、洗濯機に放り込んでいる」と話した。

格子構造で軽量であることが特徴の素材にエラストマーを使ったアディダスのミッドソールは、3Dプリント技術によってのみ製造が可能となる。カーボンは昨年、このミッドソールをおよそ10万個生産。2年後までに、さらに数百万個を生産したい考えだ。

ランニングシューズに加え、カーボンは米リデル(Riddell)との提携により、スポーツ選手用のヘルメットに使用されるライナーの生産も行っている。デシモーネによれば、このライナーはナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の選手向けにとどまらず、高校生や小児用のヘルメットにも用途を広げることができる。長期的には、ライディングギアや自転車のサドルといったその他の製品も手掛けていきたいという。

同社にとってのもう一つの大きな市場は、デンタル用品だ。特にカスタムメイドのアライナー(矯正装置)に、3Dプリンター技術が採用されるようになっている。米デンツプライシロナ(Dentsply Sirona)と提携し、アライナーのほか義歯(FDAの認可取得済みの素材を使用)を生産している。

デシモーネはその他、医療関連の製品にも市場を広げていきたい考えだ。ジョンソン・エンド・ジョンソンと共同で、生体吸収性高分子ポリマーを使った外科手術に使用可能な製品を開発している。

新たに調達した資金により、カーボンは今後、研究開発にさらに力を入れていく方針。欧州やアジアなど、米国以外の市場での事業拡大を目指す。特に注目している分野には、3Dプリンター技術を用いたリサイクルと堆肥化が可能な素材の開発がある。

フォーブスの推計では、カーボンの今年の売上高は1億ドルを超える見通し。デシモーネと息子のフィリップ(最高顧客責任者)が共同で設立した同社がこれまでに調達した金額は、6億8000万ドルを超えている。

編集=木内涼子

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