経済・社会

2019.05.28 18:05

欧州議会選は「英国の2度目の国民投票」? 結果は何を示すのか

メイ首相は欧州議会選挙の投票が行われた翌日、涙ながらに辞任を発表した(Photo by Leon Neal/Getty Images)

メイ首相は欧州議会選挙の投票が行われた翌日、涙ながらに辞任を発表した(Photo by Leon Neal/Getty Images)

テリーザ・メイ英首相は5月24日、辞任を発表した。首相が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を実現できなかったために参加せざるを得なかった欧州議会選挙の投票が行われた翌日のことだ。

辞任の発表は、まるでタイミングを計ったかのようだった。選挙結果はまだ出ていないものの、与党が惨敗することは出口調査から明らかだった。メイ首相は前任者のデービッド・キャメロンと同様、避けようのない逆風に直面するよりも、自ら辞めることを決断した。

欧州議会選挙は英国の与党・保守党と最大野党・労働党にとって、惨たんたる結果となる見通しだ。両党とも、ブレグジット問題に完全にうんざりしている英国の有権者たちから見放された。

ナイジェル・ファラージが立ち上げたブレグジット党は、得票率32%で第1党となることが確実だ。また、「離脱反対」を掲げて選挙戦を戦った自由民主党と緑の党は、どちらも2大政党から多くの議席を奪った。2大政党が選挙活動をほとんど行わなかったことも、ブレグジットに対する態度を明確にしているその他の党が、より多くの議席を獲得することにつながった。

一方、英国の投票率はわずか37%だった。これは、有権者たちが別の形で示した英議会への抗議だ。多くの有権者は、全く意味がないと思える選挙に票を投じる気にもならなかったのだ。

今回の欧州議会選挙は事実上、2度目の国民投票になったといえる。そして、最初の国民投票のときと同じように、結果として示されたのは、国民の意見は完全に割れているということだ。

残留派と離脱派は、どちらも勝利を主張している。だが、英国の選挙分析の専門家、ジョン・カーティス卿はBBCに対し、結果は五分五分だったとの見方を示している。選挙結果が全ての人を喜ばせることは、決してない。

ファラージは、自党の勝利は国民が「合意なき離脱」を望んでいることを証明したと断言する。だが、自由民主党と緑の党、チェンジUKはいずれも、国民が2度目の国民投票の実施を求めていることを示す結果だと主張する。国民投票がなぜ「離脱中止」という彼らの目標の達成につながると考えられるのかは不明だ。

今回の欧州議会選で証明されたことが何かあるとすれば、それは2度目の国民投票は全く何の解決にもならないということだ。離脱強硬派と残留派のどちらも、明らかな過半数を獲得していない。そして、示された妥協案には誰もが反対だ。国民の意見も政治家の意見も、あらゆる点で割れている。

いずれにしても、この結果から考えられるのは、たがいに傷口をなめ合い、次にどうすべきかと悩む2大政党以外の全員が勝者だったということだ。そして、2大政党が次にすべきことは、火を見るよりも明らかだ。

国民は保守党と労働党に対し、ブレグジットに関する態度を明確にすることを求めている。そして、両党に与えられている選択肢は2つだ。英国がEUから完全に離脱するか、完全に残留するか、そのどちらかしかない。

両党は決断しなければならない。曖昧な態度でいることは、もはや選択肢には含まれない。ブレグジットを巡る困難な問題への回答を避けたり、ごまかしたりすることで、有権者の支持を維持することはできない。3年に及ぶ政治的なごまかしは、離脱派と残留派の有権者の双方を怒らせた。

メイ首相は辞任会見で、妥協を呼び掛けた。だが、首相がその座を失うことになった原因は、妥協点を見出そうとしたことだ。国民は、これまでに示されてきた妥協を望んでいない。

実現するにしても撤回するにしても、国民はブレグジットに決着をつけたいのだ。英議会は、決断を下さなければならない。

編集=木内涼子

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