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AI通信「こんなとこにも人工知能」

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2017年に日本で「がん」により命を落とした人の数は37万3334人。米国でも同年に約60万人が死亡しているとの調査結果が報じられている。

医療による病気の克服もさることながら、さらに課題となっているのが予防である。がんは遺伝的要因だけでなく、発がん性物質など環境要因によって発症するとされているが、後者の解明はまだまだ進んでいない。

そんななか、米ボストン大学医学部のStefano Monti教授チームらが、化学物質の発がん性を効率的に選別するための人工知能(AI)を使った検査方法を開発したという。なお今回の研究に関する詳細は、アメリカ科学振興協会が運営するオンラインニュースサービス「EurekaAlert」、科学ジャーナル「Environmental Health Perspectives」などに掲載されている。

情報はネット上で公開へ

商業的に使われる数万種の化学物質のうち、潜在的な発がん性が完全に検証されたものはわずか2%に過ぎないとされている。その理由としては、現在の化学物質の検査手順では、費用および時間がかかり過ぎるという側面が指摘されている。研究チームが開発した検査方法は、人工知能を利用することで、化学物質の発がん性を低コストかつ迅速、また正確に判別することができると評価されている。

研究チームは、発がん性、もしくは発がん性がないと判明した数百種の化学物質に、人間の細胞株を露出させた。次に細胞株に発がんした遺伝子プロファイルを機械学習アルゴリズムに入力した。このアルゴリズムは、発がん性物質/非発がん性物質を区別するために学習を受けたものだが、すでに物質の発がん性を正確に推論する能力を見せていると研究チームは説明しており、同検査方法によって得られた発がん性物質の情報はインターネット上で公開されていく予定だ。

Monti教授は、アルゴリズムの検証や改良が進めば、検査の候補となる化学物質の優先順位をつける迅速かつ安価なアプローチになるとする一方、内分泌疾患や代謝障害を引き起こすような、発がん性物質以外の化学物質の悪影響を評価するのにも応用できると説明している。

新薬開発に使われる人工知能「創薬AI」にも、候補物質の絞り込みなど、これまで製薬会社が払ってきた時間的、費用的コストを圧縮する効果が期待されている。日本も含む世界各国では、製薬会社が新薬を開発する期間が長く、またコストが高すぎるがゆえに、既得権益を守る動きから、効果的な新薬が日の目を見ることができないというケースも少なくないとされている。

がんを発見する画像認識AIなどの発展はめざましいが、「がん根絶」というシナリオを実現するためには、ボストン大学研究チームが開発したような発がん性物資を発見するAI、また創薬AIなどが並行して発展することが重要になってきそうだ。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基

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