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2019.04.27 11:00

「ブドウかす」からスカート? 伊スタートアップ、生物由来のテキスタイルでH&Mとも提携


ブドウかすを「クルエルティフリー」なテキスタイルに

では、審査員を唸らせたそのアイデアとは何か。

ワイン醸造後のブドウの「かす」を再利用し、ファッションやインテリア、自動車に利用可能な素材に変えるというものだ。世界1位を争うワイン生産国、イタリアらしい発想である。つまりブドウかす(ブドウの皮、種、実をつなぐ茎部分)を、環境への影響を低く抑え、かつ動物実験を行わない「クルエルティフリー(商品や活動が、動物を傷つけたり殺したりすることを含んでいないこと)」の「ヴィーガン」なテキスタイルに変換するプロジェクトなのだ。ちなみにすでに特許を取得、各種検査も通過している。

ヴェジェア社のホームページには、「われわれはアグロインダストリー(農業資源を基にした工業)の副産物管理に関して、廃棄でなく再生を促進しうるテクノロジーを開発する。(中略)ファッションならびにデザイン、自動車ならびに交通、そして包装の分野で使える生物由来のマテリアルを製造する」とある。

これは、シーバスの目指す「1人ひとりの豊かさにとどまらず、多くの人の生活や環境を豊かにするような事業の成功をコンペティションを通してサポートし、増やしていく」という理念と重なり合うプロジェクトだ。実業界への人間的な、そして実に責任感に裏付けられたアプローチでもある。

集合写真
写真左:「ペルノ・リカール・イタリア」CEO兼「シーバスリーガル」ブランドオーナーのアルベーナ・トリフォノーヴァ、写真中央:マルコ・ベルナルディ、ヴェジェア社R&Dマネージャー(Photo: Davide Fanton)

ヴェジェア社は2017年に、ファッションブランド「H&M」創業者のステファン・ペルソンから、「サーキュラー・ファッションのための世界最大のリサイクル・チャレンジを行った」として「グローバル・チェンジ・アワード」を受賞している。「サーキュラー・ファッション」とは、サステーナブルな、「循環する素材」を追求するファッション・テキスタイル業界の新コンセプトである。

ペルソンは、地球規模の生活環境改善に高い関心を寄せていることで知られる実業家で、H&Mは2030年の戦略案に「100%サステーナブルな素材へ」を掲げている。ヴェジェア社とこのH&Mの業務提携も決まっている。

「シーバスベンチャー」について(「シーバスベンチャー2019・応募規約/現地条件より)

コンペティションは2つのステージに分けられる。

■第1ステージ(ローカル大会) では、参加国から優勝者を決定する。日本でのローカル大会の場合、現地の条件に準拠しつつ、現地の主催者が日本法の元に運営する。

■第2ステージ(世界大会)は、ローカル大会の優勝者が互いに競い合うもので、次の3つのステージで構成される。

・イギリスで開催予定の指導プログラム(アクセラレーター・プログラム)への参加
・投票期間(この間の消費者投票の結果に基づき、資金10万ドルが分配される)
・シーバス・ベンチャー・ファイナルピッチへの参加(ヨーロッパで開催予定であり、次の規定に従い資金分配の機会が付与される)

第2ステージはさらに以下の段階を踏む。

◎準々決勝:審査員は、準決勝に進める10組の合格者を審査する。このステージで敗退した準々決勝出場者に対しては、5万ドルが分配される。

◎準決勝:審査員は、世界ファイナルに進める5組の合格者を審査する。敗退した5組の準決勝出場者に対しては、10万ドルが分配される(それぞれが2万ドルを受け取る)。

◎グランドファイナル:最後の5組のファイナリストには、75万ドルが分配される。受取人と取り分については、審査員が単独の裁量で決定する。

文=Alessia Bellan 翻訳=大村紘代 編集=石井節子 写真=Forbes Italia提供

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