レジ待ちの列を短くして買い物を便利にしたいと望む他社も、そこに未来のビジネス像を見出している。こうした新たなテクノロジーによって、買い物客はより早く店を出られるし、面倒な思いをすることも減っていく。
アマゾン・ゴーで買い物するときは、現金もクレジットカードもいらない。必要なのは、アマゾンのアカウントとアプリだけだ。アマゾン・ゴーを開店しようと思い立ったきっかけは、最近のスーパーでよく目にするセルフレジだったのではないだろうか。セルフレジの登場によって買い物客は、自分で会計を済ませたり、自動レジの指示に対応したりすることに慣れてきた。こうしたコンセプトは、アマゾンによってさらに進化させられ、今では大いに注目を浴びている。
シカゴ・トリビューン紙のローレン・ズムバッハ(Lauren Zumbach)が3月に書いた記事によると、米中西部で総合スーパーを展開する同族経営企業「メイヤー(Meijer)」(本社はミシガン州グランドラピッズ)は、グレーター・シカゴとインディアナ州北西部にある同チェーン店で、買い物客が棚から商品を手に取ってスマートフォンのアプリでスキャンするだけで決済を完了できるシステムを導入した。気が済むまで買い物をしたら、あとはチェックアウト用カウンターに寄ってセルフレジに電話をかざすだけで会計は終了し、店をあとにできるという。
メイヤーは、総合スーパー約204店舗を展開しており、推定売上高は174億ドル(約1兆9441億円)。1934年に創業されて以来、メイヤー家が所有・経営している。
記事によれば、メイヤーを利用する客は、アプリを使った決済方法にすぐさま飛びつきはしなかったようだ。不具合や欠点も明らかに存在しており、改良しなくてはならない。商品をスキャンし忘れる人がいることが、チェックアウトの待ち時間を長くしている。チェックアウトカウンターで抜き打ち検査があるときに待たされるのが嫌だという人もいる。
百貨店メーシーズと会員制スーパーのサムズ・クラブも、こうした便利なチェックアウトシステムを独自に導入している。メーシーズでは、アプリを使って決済する客でも、チェックアウトカウンターに寄る必要がある。一方のサムズ・クラブはその必要がないが、会員制ホールセール(卸売り)型ショップのつねで、店を出る前に出口で店員にレシートを見せなくてはならない。厳しい手荷物検査があるというわけだ。
サンフランシスコに本拠を置く「スタンダード・コグニッション(Standard Cognition)」は、人工知能(AI)を使った無人店頭レジシステムを、実店舗向けに開発している。これは、アマゾンの革新的技術から着想を得たものと思われる。
同社のシステムでは、天井に設置されたカメラで買い物客ひとりひとりをトラッキングし、自動的に代金を請求するようになっている。現金払いを希望する買い物客ももちろんおり、その場合は店内にある別の端末で支払いを済ませる。
店側はこれまでと同様、商品補充を人力で行わなくてはならず、助けを必要とする客に対応する必要もある。つまり現時点では、労力の節約は最小限にとどまっている。とはいえ、買い物客がより早くサービスを受けられるのは間違いないし、時間とともに新しいテクノロジーに慣れていくだろう。
このように、革新的な技術はすでに稼働している。ひとつの小売店をきっかけとして、今ではより多くの店でそうした技術が普及し、徐々に私たちの生活の一部となりつつある。消費者の買い物時間を短縮させ、店舗での買い物をより楽しくしてくれるイノベーションに拍手を送りたい。