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この時期、出張や旅行で欧米へ向かう時、気をつけなければいけないのが「サマータイム」だ。欧州連合(EU)のすべての加盟国では、3月の最終日曜日に時計を1時間進め、10月の最終日曜日に1時間を戻している。

しかし3月26日、欧州議会は「サマータイム制度」を2021年に廃止する法案を可決した。今後、加盟国の代表との話し合いで、最終的な合意がなされる。通年適用する標準時間を「夏時間」と「冬時間」のいずれかにするか、足並みを揃える方針だ。

省エネ効果?病気のリスク?サマータイム制度の功罪

そもそもサマータイムとはどのような制度なのか。

別名デイライト・セービングタイム(Daylight Saving Time:DST)とも呼ばれるサマータイム制度は、夏の一定期間、時刻を1時間前後進める、日照時間の有効活用を目的とした制度。EU加盟国に加えて、アメリカやオーストラリアなど、緯度が高く夏の日照時間が長い国々で多く導入されている。

サマータイム制度導入には、夜の余暇時間の増加に伴う消費・経済の活性化のみならず、交通事故・犯罪発生率の低下や照明の節約による省エネ効果などが期待される。

一方で、生活リズムの変化によるうつ病や心臓発作のリスクの増加、日付・時刻が関係する各種システムの更新による社会・経済的影響などの懸念もある。また、期待されていた省エネ効果もさほど見られないことから、近年ではサマータイム制度に対し厳しい目が向けられていた。その流れが、今回のEUにおける制度廃止の決定へ繋がっている。

日本に根付かないサマータイム

日本ではあまり馴染みのないこの制度だが、過去に4年だけ施された歴史があることはご存知だろうか。

第二次世界大戦後、GHQの指導下で1948年に公布された「夏時刻法」により、サマータイム制度が導入された。しかし、占領終了と共に1952年に廃止。明るい時間が伸びることで残業が増えるなど、労働環境の悪化も一因だったという。

その後も、省エネ効果や経済効果を理由に、政府によるサマータイム制度導入の検討がなされたほか、日本経済団体連合会による「エコワーク月間」の導入、滋賀県庁、札幌商工会議所など地方・企業単位での試験導入が見られたが、制度の長期採用には至っていない。

賛成たったの27%─世論が味方せず、断念の「レガシー形成」

日本におけるサマータイム制度の話題で記憶に新しいのは、2020年東京五輪・パラリンピック時の実施案だ。

昨年、記録的猛暑により、各国から大会開催時の暑さ対策を求める声が多く挙がると、大会組織委員会の森喜朗会長は、マラソンの開始時期を30分早めるなどの対策に加え、サマータイム制度の導入を政府に要望。政策が大会のレガシー(業績)の一つになるのではと注目を集めた。

しかし、NHKが昨年9月に実施した世論調査では、サマータイム制度導入について「賛成」は27%。「反対」の43%を大きく下回った。このような世論の反対意見や、時刻変更のための大規模なシステム改修を考慮すると、2年以内の実現は困難であると判断。同年10月末に、政府は正式に実施の見送りを発表した。

日本における再導入はおろか、慣習化していた欧州からも姿を消すサマータイム制度。レガシー(過去の遺産)となってしまうのも、時間の問題かもしれない。

文=大竹初奈

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