── 地方で拠点づくりをする上で、どんなことを心がけていますか。
都心部だとビジネスライクであまり感じないかもしれませんが、先述の通り、地方だと「何をするか」よりも「誰がするか」が重要なんですね。移住してくる人が何者なのか?地域とどんなつながりがあるのか?誰が彼らの事業や活動を支えているのか?こういったことが最優先されます。これらのハードルを乗り越えれば、地域でも受け入れてもらえるでしょう。
ただ、よそ者が地域を変えることが実証されてきた地域では、移住者はとても温かく迎え入れてくれます。ITやデザイン、ビジネスなどのスキルを生かしたい人たちにとって、むしろ地方の方が成功しやすいとも言えるかもしれません。競合が少なく、地元メディアも注目してくれるでしょう。
また拠点づくりをする上では、「どれだけ相手の視点に立てるか」が鍵となります。例えば空き家問題に対しては、経済的なアプローチよりもオーナーの思いに寄り添うなど、丁寧に関係性をつくることが大切です。
──「ADDress」のサービス設計でも、地域との関係性を大事にしたそうですね。
「ADDress」というシェアリング事業者が地方に参入するのではなく、僕らはプラットフォームでしかありません。あくまでオーナーシップは地域にあります。地域で活躍できる個人を増やすためのシェアリングサービスという立ち位置です。ADDressの拠点として空き家を貸し出してくれるオーナーにとって、お盆や正月だけでも墓参りなどで親戚が集まる場が必要な場合があります。そういう場合は、家を使わない時だけ貸し出してもらえれば良いのです。
全国には、不動産の賃貸情報や空き家バンクに登録されない空き家が数多くあります。僕たちはオーナーの思い出を大切にしながら、リノベーションなどをして、利用者にとって住みやすい環境を整えてから貸し出します。すでに空き家で困っている人からの相談が人づてに来ています。そういったローカルなつながりは面白く、東京のシェアハウスで感じた「リアルなソーシャルメディア」という感じがします。炎上リスクもありますが、信頼されるとどんどん広がって行きます。
── 最後に、多拠点生活をしてみたいと思っている人たちにメッセージをお願いします。
人生において奥深い接点ができた人や地域は、どこにいても大事な存在になります。僕自身も実家だけでなく、静岡の熱海や岩手の釜石など、「ただいま/おかえり」の関係性が増えてきています。地方と都心を行き来することで、バランスが取れてライフスタイルが充実しました。これからは定住という考え方ではなく、シェアサービスが全国、世界に広がることで多拠点生活が当たり前の時代になるでしょう。
佐別当隆志◎1977年大阪府生まれ。2000年ガイアックス入社。16年一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。18年11月よりアドレス代表取締役社長。プライベートでは自宅兼シェアハウス「Miraie」を運営。