若くしてアパレル企業プロファウンド・エステティック(Profound Aesthetic)を創業し成功を収めた起業家のナビル・ザイディは、年下の上司が年配の部下と生産的に働くためのコツとして、経験に敬意を払い、個々のワークスタイルを尊重しつつ、権威と共感を示すことが大切だと考えている。
しかし、彼のマネジメント方法の核にあって、おそらく最も重要なのは、十分な時間をかけて部下の理解に努めるという原則だろう。つまり、部下に影響やモチベーションを与えるものが何かを把握するのだ。
これは特に専門的だとか、複雑なことではないように思える。単に思いやりの心を持ったマネジメントを日々行うだけだ。
しかし、これは重大事にもなり得る。調査会社ギャラップなどの調査によると、米国でエンゲージメントの度合いが高い従業員はわずか30%前後。つまり70%はエンゲージメントが低く、実に多くの従業員がマネジメント側に理解されていないということになる。かなりの数の従業員が、疎外された状態にあるのだ。
部下と話したがらない管理職
私はこれについて考えるうち、過去のある経験を思い出した。私が企業に務めていた頃に親しくしていた人事担当副社長は、時間をかけて本社内を回り、管理職が部下とのやりとりを観察していた。彼女の結論は、部下と話したがらない管理職が多すぎる、というものだった。自分の役割は権力を行使して統制することだと考え、それ以上のことはしない管理職は多い。結果として、従業員エンゲージメントや生産的な関係構築は限られたものとなる。
これは当然のことに思えるかもしれないが、こうしたマネジメント上の問題は実際に繰り返し発生している。定期的な対話の時間を取ることなしに、部下を理解するのは難しい。部下が欲するものや欲してないもの、モチベーションを得られるものとそうでないものを理解できないのだ。
健全なマネジメントに必要なことの多くは、とてもシンプルで常識的なものだ。しかし常識であるからといって、広く実践されているとは限らない。
常々言っていることだが、私はコミュニケーションが下手な良い管理職に会ったことがない。これは、私がマネジメント分野での数十年の経験から得た見解だ。