キャリア・教育

2019.03.10 09:00

なぜ、自分の好きなように生きるのか|CEOの一冊 グリーベンチャーズ堤達夫

『自分のための人生』ウエイン・W・ダイアー(著)、渡部昇一(翻訳)

各界のCEOが読むべき一冊をすすめる本誌の連載「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、「自分らしく生きる」きっかけとなる『自分のための人生』をグリーベンチャーズ代表取締役の堤達生が紹介する。


皆さんは、自分が本当にやりたいと思うことができていますか。私が本書を読んだのは、40歳を超えた頃。起業してからがむしゃらに走り続けてきて、ふと自分の人生を振り返り、「これでいいのだろうか」という、もやもやした不安感と虚無感を抱えていました。

とはいえ、事業はすこぶる順調。成長が期待できる、気概ある起業家をサポートするベンチャーキャピタリストという仕事に、強いやりがいを感じていました。その一方で、いつも誰かの期待に応えようと「こうあるべき」という型に自分を押し込み、やりたいことを我慢して生きていたように思います。
 
そんな私に、「グチャグチャ考えていないで、自分の好きなように生きればいい。この本を読んでみろ」と、元上司が勧めてくれた本書は、読んですぐに腹おちし、その後の生き方を変えてくれました。

「自分の好きなように生きる」と言っても、決して利己的な意味ではなく、「充実した人生は他から与えられるものではない。自分が何を選び、何をするかですべてが決まる。日々、自分を大切にして生きていこう」という意味です。
 
実は、一事を成し遂げた経営者たちに冒頭の質問をしたところ、「自分のために生きることが、結果として、会社や社員や家族の幸福に繋がっている」という答えが大半だったことも、本書や元上司の言葉を確かなものにしてくれました。
 
人は、社長や父親、夫など様々な役割を担っています。その役割を果たしていくだけの人生は「楽」だと感じる時もあるでしょう。しかし、自分を抑え込む我慢はいずれ限界を迎えます。

そんな時、自分が心から面白いと思えるものに挑戦してみてください。自分で決めたことだからこそ、納得して打ち込めますし、心から楽しむこともできるはずです。同時に、その経験が人のためになり、本業のプラスになることも分かるでしょう。「自分がやりたいことをやった結果が人のためになる」という生き方に、限界はないのです。
 
ベンチャーキャピタルの世界は、見合うべき投資先が限られているため、それだけでは残念ながら一部の社会問題しか解決することはできません。そこで最近、私は地域創生という文脈で、地方で地のものを使って事業を行い地域を活性化していく会社に、本業とは関係なく、経営のアドバイスをするようになりました。これまでのベンチャーキャピタリストとしての人生に、「私」という一個人の生き方が加わったことで、人生がさらに多様で豊かになったことを実感しています。
 
もし、自分の人生に不安を感じたら、立ち止まって「自分で選び、自分で決める、自分のための人生」があることを思い出してください。そして、自分らしい道を見つけてほしいと思っています。

title:自分のための人生
Author:ウエイン・W・ダイアー(著)、渡部昇一(翻訳)
Data:三笠書房 1188円(税込) / 194ページ


つつみ・たつお◎三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、シーエー・キャピタル(現サイバーエージェント・ベンチャーズ、現YJFX)設立、リクルートを経て、2011年にグリー入社、グリーベンチャーズを立ち上げた。

構成=内田まさみ

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