ビジネス

2019.03.05

日本企業の99%が中小 いま「ベンチャー型事業承継」が必要な理由 


後継ぎがポジティブに語られる世界に

ベンチャー型事業承継は「中小企業の新規事業」の言い換えにすぎませんが、そこに大きな価値があると思っています。一般社団法人の立ち上げが報じられてから、40代くらいの中小企業経営者から「孤軍奮闘がようやく世間に認知された」と感謝のメールをいただくようになりました。

大企業やスタートアップに比べて、これまで中小企業の取り組みはなかなか注目されませんでした。ラベルの張り替えによって、彼らの人生を懸けた努力がかっこいいと思ってもらえるようになったのなら、それはとても嬉しいことです。

また、中小企業の後継ぎがネガティブな言葉で語られてきたことも、後継者不足を加速させた一因だと思います。盤石な会社を継げば「親の七光に甘えたボンボン」、窮地に陥った会社を継げば「家族の犠牲になった可哀想な人」……。だから私は、中小企業で活躍する若者がポジティブに語られる環境をつくりたい。そうすれば、将来の後継ぎになるかもしれない若者が、中小企業に憧れを抱くかもしれないですよね。

成熟産業でイノベーションを起こすには、時間がかかります。だからこそ、すぐさま新規事業の種を蒔かなければいけません。いま準備をすれば、その種が10年後に実をつけるかもしれない。先代が現役のうちに失敗を恐れずどんどん挑戦できるのが、ベンチャー型事業承継の良い点です。

一般社団法人のオンラインサロンには意欲にあふれた後継者、あるいはこれから家業を継ぐ若者が集まっています。彼らが20年後に向けて少しでも活動しやすくするのが、私の仕事です。ユニコーン(10億ドル以上)企業が1社生まれるより、1億円の家業を10倍に伸ばせる後継ぎが100人生まれた方が、日本はきっと豊かになりますから。


山野千枝◎1969年、岡山生まれ。千年治商店 代表取締役。ファミリービジネスの事業承継、広報ブランディングを専門に、広く活動している。2018年に一般社団法人ベンチャー型事業承継を設立。

文=Forbes JAPAN編集部

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