出資額などの詳細は明かされていないが、ボーイングはエンジニアリングや設計及び製造のサポートを行い、試験設備などのリソースも提供する。Aerionは2017年にロッキード・マーティンと提携を行ったが、同社の広報担当のJeff Millerによると、ロッキードとの提携は打ち切るという。Millerは詳細についての言及を避けた。
ボーイングの次世代機の開発部門Boeing NeXT の主任を務めるSteve Nordlundは声明で「Aerionの超音速における専門性とボーイングのグローバルな産業規模、さらに商用旅客機分野での経験を活かす、理想的なパートナーシップになる」と述べた。
Aerionは、テキサス州のビリオネアのRobert Bassの野心的プロジェクトとして始動した。同社はマッハ1.4(時速1600キロ)で飛行する12名乗りの超音速ビジネスジェット「AS2」を開発中だ。AS2は約3時間で大西洋を横断できる。
Millerによるとロッキードとの提携打ち切りによる、開発の遅延は生じないという。AerionはAS2の初飛行を2023年までに行う計画で、2025年の発売を目指している。
航空業界のアナリストでTeal Groupに勤務するRichard Aboulafiaは、「ロッキードよりもボーイングのほうがAerionのパートナーにふさわしいかもしれない」と述べる。
「ロッキードは1984年のL-1011トライスターの生産終了以降、民間航空機市場から完全に撤退している。ボーイングのほうが現代の民間航空機に要求される仕様や設計に関する知見を、豊富に持っていることは確かだ」とAboulafiaは続けた。
ボーイングはAerionの取締役会に、2名のメンバーを送り込むことも宣言している。
「しかし、ボーイングがどこまでAerionとの提携を真剣に考えているかは、出資額の規模によるだろう。1000万ドル程度であれば、Aerionの開発動向に探りを入れる程度。1億ドル規模であれば本格的な提携で、買収を視野に入れている可能性もある」とAboulafiaは述べた。
AS2の販売価格は1億2000万ドル(約130億円)とされており、これは一般的な大型ビジネスジェットの2倍に及ぶ金額だ。しかし、Aerionは昨年秋に「10年間で300機の販売を見込み、トータルでは500機を販売する」と述べていた。
超音速旅客機分野では今から約15年前にコンコルドが運行を停止したが、現在は世界で3つの企業が開発を行っており、Aerionはその1社だ。デンバー本拠の「Boom」は今年1月に1億ドルの資金調達を実施し、55人乗りの中規模な超音速旅客機を開発するとアナウンスした。
また、ボストン本拠の「Spike」も、18人乗りの超音速ビジネスジェットの開発を進めている。