カーネギーメロン大学留学を経て名古屋大学で教鞭を執っていた加藤は2015年に世界で初めてオープンソースの自動運転OSとしてオートウェアを無償公開。同年、オートウェア開発などを担うティアフォーを設立した。
「多くのティア1やOEMもオートウェアを使っています。既に他社が追いつけないところまできつつある」と同社経営幹部は言う。画像認識、センサー、人工知能、制御など様々な最先端技術から成り立つ自動運転技術。基礎研究開発を進める国内外のトップの大学との産学連携をベースに、世界の最前線で競争を展開する。
強さの根源はオープンソースだ。「後発の我々が爆速で追いつくにはそれしかなかった」と加藤は言う。巨大な資本力がなくても、世界中の企業や技術者が「勝手に」協力し、各地で実証実験して開発を進めてくれるエコシステムを生んだ。そのオートウェアを使って、ティアフォーは技術者向けセミナーの開催や、低速・近距離移動の「ラストワンマイル」のプロトタイプ車両の開発などを進める。
東京都江東区の清水建設技術研究所。2万1000平方メートルの敷地内で休日、無人運転車3台が低速で走り回る。建物と車が連動しモノや人がスムーズに移動する新しいコミュニティの共同研究だ。「ティアフォーのオープン戦略で利害関係が一致し、やりやすかった」と同社担当者。KDDI、損保ジャパン日本興亜、日本郵便などとも提携を発表。各地で実証実験を繰り返す。
無償公開のオープンソースをどのように事業化するのか。加藤の答えは「二重の参入障壁」だ。自動運転という参入障壁が高い技術の上に、VRやARを使った車内空間の開発や3D地図などさらに技術的に難易度が高いビジネスを組み合わせる。目指すは他社が真似したくても真似できない、自動運転業界のプラットフォーマーだ。
加藤は豪語する。「いま、非常にいい立ち位置にいる。世界の圧倒的なトップシェアを狙っています」。
ティアフォーの創業者で取締役CTOの加藤真平。東京大学大学院でコンピュータ科学の講座を持つ。12月にはオートウェアの開発や普及の促進を目的にした国際団体を立ち上げる。