中には、そうした方針や施策は業績の良い時期はお飾りとして続けられるが、状況が厳しくなれば真っ先に切り捨てるべきだという否定的な見方もある。これは賢い考え方なのだろうか?
デロイトが最近発表したレポート『グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド』では、それが大きな誤りであることが示されている。レポートでは、企業が従業員にウェルビーイング施策を提供することの重要性を強調するとともに、状況は改善されてきたとはいえ、従業員側の期待と雇用主側が提供するものとの間には依然として大きなギャップが存在することを指摘している。
例えば、従業員がフレキシブルなスケジュールを求める企業は全体の86%だったが、実際にこれが提供されている企業は50%だった。残念ながらこれはまだ良い方で、その他のウェルビーイング対策の大半では需要と供給の差が大きく開いていた。
従業員の70%が望む在宅勤務は28%の企業でしか実現しておらず、メンタルヘルスのカウンセリングは従業員の60%が希望しているのに対し、わずか21%の企業でしか実施されていない。バックアップ・デイケアの支援は、従業員の53%が希望しているのに対し、提供している企業はたった8%だという。
よりスマートなウェルビーイング
管理職は、従業員が申告した主なストレス要因をみて学ぶこともできる。例えば、引退できることや雇用保障は昔から優先順位の高い懸念事項とされているが、現在では心身の健康やワーク・ライフ・バランスも大切なものとされる。
経済面や健康面など、従業員のウェルビーイング支援方法はさまざまあるが、企業が重視すべき領域は、従業員の声を聞くことで明らかになる。また、この結果は広く世代を超えて共通しているということ。さらにウェルビーイングを重視することは、競争力を高める上でも必須となってきている。
財務業績が良い企業は、悪い企業と比較して、ホリスティック(全的)なウェルビーイング施策を提供する割合が約11倍高いというデータがある。これは、従業員の体の健康のみに留まらない福祉施策の形態だ。
デロイトによると、こうした企業では、従業員が評価され支援されていると感じているため、他社より優れた業績を達成できるのだという。この調査結果は、コロラド州立大学のチームが2015年に発表した研究結果でも裏付けられている。この研究では、従業員のウェルビーイングに対する要求を満たすと生産性が向上することが示された。