アップルにFace IDコンポーネントを納入するオーストリアのAMSが、iPhoneからノッチを取り除き、完全なベゼルレスデザインを実現できるかもしれないテクノロジーを発表した。AMSは暗い場所でも正確に作動する、照度センサーと赤外線近接センサーを開発した。
このセンサーのコンポーネントは、OLEDディスプレイに埋め込み可能な薄さ0.5ミリ、2 x 2.5ミリ角のサイズで、ディスプレイ越しでも外部の情報を取得できる。これにより、従来のiPhoneのようにノッチで画面の切り欠きをつくらなくても、Face IDを使用できることになる。
「当社のプロダクトのTCS3701は、スマホの新時代のデザインを可能にする製品で、完全にベゼルレスのディスプレイを可能にする」と、AMSのシニアマーケティング担当のDavid Moonは述べている。
AMSは同社の売上の45%をアップルから得ており、このコンポーネントがアップル向けに開発されたものであることは明らかだ。AMSは先月、今後の売上見通しを20%引き下げており、その理由を「主要クライアントからの受注量の変化」によるものとしていた。
アップルも1月初旬に今後の売上見通しを引き下げており、AMSの売上減がアップルによるものであることは確実だ。
しかし、AMSのテクノロジーがiPhoneの売上の急回復につながる見込みは薄い。
なぜなら、仮にFace IDをディスプレイ内に格納したとしても、フロントカメラを設置するスペースは必要だからだ。アップルにディスプレイを供給するサムスンは、フロントカメラをディスプレイの下に格納する「New Infinity」スクリーンを発表したが、このプロダクトが世に出るまでには、少なくとも2年が必要だ。
その結果、アップルは妥協策としてサムスンの「穴あきディスプレイ」を模倣しようとしているが、その端末が発売されるのも2020年以降のことになる。
アップルの2019年の新型モデルは「iPhone XI」と呼ばれ、背面にトリプルカメラを搭載し、指紋センサーのTuchIDとFaceIDのデュアル認証となることが期待されているが、5Gには対応しない。
このスペックは、競合と戦う上で十分なものといえるだろうか。今年の新モデルでも、アップルがiPhoneの需要を復活させることができない場合、同社はさらなる値下げ圧力に直面することになる。