アメリカン・エキスプレスが2018年、新たなブランド戦略を打ち出した。国内・海外問わず、ビジネスでもプライベートでもアメックスが使えることを強調。オンとオフの境目が薄れ、限られた時間の中でハイブリッドな毎日を送る人々のリアルを、同社は世界8カ国で意識調査を行い、いち早く掴んだ。毎日をオン・オフ両面でパワフルに「BACKING(後押し)」していく、というメッセージを発信している。
個人カードのイメージが比較的強いアメックスだが、近年は法人向けビジネスの伸びが大きく、個人向けと同規模に成長しているという。アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.法人事業部門副社長/ジェネラル・マネージャーの須藤靖洋に聞いた。
グローバルで展開するハイブリッド戦略の背景には生き方、働き方、ビジネスのあり方の多様化がある。ベッドに横になり、赤ちゃんを抱きかかえる男性が、机上のPCに手を伸ばし、仕事をしている。アメックスのテレビコマーシャルを見て、思わず頷いた人もいるのではないだろうか。
事前に行った意識調査から、大きく二つの傾向が見えてきたという。「一つはグローバル化。そしてもう一つは、人々の行動がよりハイブリッド化していること。日本でも働き方改革が進み、育児をしながら仕事をする、そういった場面もある。個人が起業することも珍しくなくなってきました。アメックスはハイブリッド化していく人々のライフスタイルに寄り添い、法人・個人双方を支援するハイブリッドブランドを志向しています」と須藤は語る。
成長著しい法人部門として須藤が強調するのは、そのカバレッジの広さだ。「アメックスなら大企業から中小企業、スタートアップ、個人事業主まで、幅広い企業規模の全てをサポートできます。企業が成長していく過程のあらゆるフェーズをバッキングし、アメックスが掲げる『世界最高の顧客体験』をご提供できるのです」と胸を張る。
米フォーチュン誌が毎年発表する米国の上位500社リスト「Fortune 500」の62.6%がアメックスの大企業・中堅企業向けの「コーポレート・カード」を採用しているという。一方、法人登記後すぐに申し込み可能であるため、「スタートアップでも、アメックスの中小企業向けの『ビジネス・カード』を持つことができる」という認知も広がってきている。
アメックスの大きな強みは、カードの発行と加盟店のネットワークをグローバルで一元管理している点だ。アメックス以外はカード発行会社と加盟店ネットワークの会社が異なる。アメックスであれば全て同じ発行体かつ同じネットワークのため、データを一気通貫して管理。グローバルでの利用履歴を一気に照会することができる。危機管理面で大きな問題が生じた場合などには、すぐに情報を提供することで顧客をサポートしている。
アメックスは独自のビッグデータを生かし、大企業向けのコーポレート・カード導入企業へのコンサルティングサービスも行っている。顧客全体のデータがあるからこそ出せるベンチマークを生かしたビッグデータ分析により、多くの大企業の課題となっている業務効率化、ガバナンス強化、コスト最適化における改善策を提案。世界中でサービスを展開し、グローバルでのデータ活用が可能だからこそできる、アメックスにしかできないサービスである。
またスタートアップ・中小企業向けのビジネス・カードを対象に、アメックスは会計管理サービスの「freee」との連携も始めた。カード利用情報を、API連携でfreeeに自動的に取り込むことができる。会計の簡易化が可能となるのだ。個人部門での経歴が長く、3年前に法人部門に移った須藤はこのハイブリッド戦略における、日本のキーマンとも言える。