しかし、日本人の感覚としては、これほど頻繁に燃えるのに、それでも死者を出すというのは、なにか「備え」はできなかったのかと、もどかしく思う。
毎年起こる山火事というのは、日本では寡聞にして知らない。この時期、サンフランシスコに行く用事があったが、空気は悪く、道行く人々がアメリカ人の大嫌いなはずのマスクをしているのを見て、この人たちがやり場のない怒りを表しているようにも感じた。
カリフォルニア州の北部、パラダイス町。サンフランシスコにも近い人口2万6000人の小さな町は、15万エーカー(約600平方キロ)もの延焼になり、約1万4000軒の家屋と5000軒の商業ビルを焼失させた。地元紙のサンフランシスコ・クロニコルによれば、約80人の死者を出している。
火事の間、町は500人の官民混合のレスキュー隊を組成し、生存者の確認、遺体の回収に努める一方、まだ火が回っていない森林の間引きをしていた。逆にいえば、そのくらいしかできることはない。
できる「備え」がそれほどない
毎年の山火事だが、いつも備えが遅れる。それはなぜなのだろうと、カリフォルニア以外の人は誰しもが思う。しかし、今回、トランプ大統領も救済を命じるなどの連邦政府事案になってやっと国民にもわかってきたことは、実は、事前の備えとしてできることがとても限られているということだ。
カリフォルニア州は毎年、大きな予算を山火事「防止対策」にとっており、今やカリフォルニアの消防本部は世界最大で、かつ消防ヘリなどの設備も最新鋭だ。今年もブラウン知事は約1000億円の予算をあてていた。危険地区の伐採などに使うが、しかし伐採は極めて高コストであり、また伐採対象となる樹木は、残念ながら商業価値が低いものばかりだと同紙は報じている。
カリフォルニア州立大学のドン・ハンキンス教授によれば、実効性が最も高いのは、伐採の代わりに事前に区域火災を起こして、延焼を防ぐことだという。
しかし空気を汚すことはカリフォルニア人が最も嫌うことのひとつだし、消防士が取り囲みながら燃やすというわけにもいかず、万が一にもそれが大火災の原因になってはと恐れられてなかなか実行されない。なので、実際には、連邦管轄の森林でのみ実行され、州管轄の森林では実行されないというちぐはぐさが起きている。