「不在上司」が会社にもたらす危険性

Pressmaster / Shutterstock.com

「不在上司」は、多くの人が経験したことのある現象だ。何ごとにも干渉せず、部下にフィードバックもしない上司。無干渉主義リーダーとも呼ばれるこうした不在リーダーは、チームにとって有害なだけでなく、企業に大きな損失を与え、離職率も増加させる可能性もあるとする調査結果はこのところ増えている。

不在リーダーとは、その場にはいるものの、部下に何もガイダンスを与えないリーダーのこと。こうした上司はトラブルを起こすことがないために見過ごされ、変化に必要な開発リソースを享受しないことが多い。

ホーガン・アセスメント・システムズのスコット・グレゴリー最高経営責任者(CEO)によれば、不在リーダーシップは消極的な管理アプローチをとる点で特殊なケースだ。

「不在リーダーは、物理的にはリーダー職に就いているが、与えられた責務を放棄している。興味深いことに、不在リーダーが多くみられるのは、上級職ではなく組織の下層レベルだ」

ビジネス心理学コンサルティング企業パーン・カンドラ(Pearn Kandola)のパートナー、スチュアート・ダフによれば、このようなタイプのリーダーは自らの仕事遂行能力は高いが、管理や指導はうまくない。

「不在リーダーには独立的な要素がある一方、共感力が欠如している。さらに、非常にタスク指向でもある。不在リーダーは、誰かが自分の問題を解決してくれるのを期待している」

ただ、不在リーダーにはポジティブな面もあるという。「不在リーダーは、部下の責任感と自主性を育てることもある。しかし、こうしたポジティブな特徴は長続きせず、ネガティブな要素の方がはるかに大きい」(ダフ)

ESCPヨーロッパ・ビジネススクールのカタリナ・バラス准教授(経営学)は「不在リーダーは、チームに大きな影響を与える可能性がある」と言う。

「リーダーとはロールモデルであり、もし不在で目に見えなければ、チームにとって一体どんなロールモデルとなるというのか? リーダーシップに空白が生じると、従業員は内輪もめを始めるだろう」

不在上司への対処方法

ホーガン社のグレゴリーCEOも、不在リーダーは組織に対し、士気の低下や内紛などさまざまな悪影響を及ぼすと指摘する。

「最大の問題の一つは恐らく、不在リーダーがより有能なリーダーへの役職の引継ぎを阻む可能性があることで、これは企業にとって長期的問題となる。チームの観点からすると、従業員は上司からのフィードバックの欠如と全般的な関心の薄さを感じるだろう」

しかし、不在リーダーは、組織によって作られるものなのか、それとも組織によって選ばれるものなのだろうか? バラスは、不在リーダーは組織の文化と人材選定の両方に関係するものであると考えている。

「ビジョンを気にかけているものの実行には関心がないリーダーは、不在リーダーだ。極端なナルシズムは、不在リーダーに関連付けられる強い個性だ」

バラスいわく、不在リーダーの行動は、組織内で対処できるという。

「組織は、異なる業務レベルにおいてインセンティブを作ることができる。上級幹部はビジョンによって評価を受けるべきではなく、アイデアの実行をもって評価されるべきだ。また、チーム側からリーダーへフィードバックすることもとても重要だ」

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事