しかし、そのiPhone XRの売れ行きに関して、非常に気がかりな事態が起きている。アップル関連情報に詳しいLoup Venturesのアナリスト、ジーン・ミュンスターは、iPhone XRが歴代のiPhoneの新モデルのなかで初めて、発売後の数時間で売り切れにならなかったことに「驚いた」と述べている。
その後の状況をみると、事態はさらに深刻に思える。10月21日時点で、アップルの公式サイト上でiPhone XRはまだ予約注文が可能で、10月26日の発売日に入手可能となっている。
事態の受けとめ方については、反論もあるだろう。アップルは巨大な需要を予測し、それに備えて大量のXRの在庫を確保していたのかもしれない。しかし、この理屈は説得力を欠いている。
第一に、11年に及ぶiPhoneの歴史のなかで、このような状況は初めてのことだ。従来は発売後数分で新モデルは売り切れ、発送は数日後から数週間後になるのが常だった。次に、XRの発売はXSやXS Maxの発売から1カ月遅れとなったが、その理由はアップルがXRの量産に苦戦したためだと広く報道されていた。
アップルが製造上の問題を克服し、記録的な台数のXRの生産に成功していたのだとしたら、非常に奇妙なことに思える。
希望的観測としては、XSやXS Maxの売上が好調だった可能性もある。XSとXS Maxは、昨年のiPhone 8やiPhone 8 Plusの初動を上回る売れ行きを記録したとの報道も出ている。しかし、昨年の8や8 Plusは2014年のiPhone 6シリーズを踏襲した4世代目のモデルであり、しかも当時の最新モデルiPhone X の発売を控えて発売されたモデルだった。
さらにいうと、かつてのiPhone 7やiPhone 6Sのほうが、iPhone 8シリーズを上回る売上を記録していたという報道もある。
ニュースサイト「9to5Mac」は9月19日の時点で、関係筋の話として、アップルがXRの需要が当初の予想を上回ると判断し、大幅に増産を決定したと伝えていた。しかし、その目論見は誤りだったのかもしれない。
筆者は以前から、XRこそが今年のiPhoneの最新モデルのなかで、買うべき端末だと主張してきた。XRは、XSやXS Maxの主要な機能の大半を備え、バッテリーの持続時間も長く、カラーバリエーションも豊富だ。しかも、価格は上位機種と比べると大幅に安い。
アップルは11月1日に最新の四半期決算を予定しており、そこで売上に関する何らかの発表がなされるだろう。しかし、同社は個々の端末の売上を明かさない方針を貫いている。iPhone XRの売れ行きが、果たしてどのような状況にあるのか、非常に気になるところだ。