2. 評価
自分の働きぶりが認められると、組織への帰属意識が高まり、とても良い気分になる。昔、私が兵士たちにレジリエンス(回復力)スキルを指導していたとき、陸軍の下士官の中で最も地位が高い陸軍最先任上級曹長(SMA)がトレーニングに参加したことがある。
彼はトレーニングが終わると、トレーニングチームの全員を会議室の前へと呼び、チームの各メンバーに評価・感謝・努力の象徴として、自身のチャレンジコイン(個人が表彰のために作る記念メダル)を一つずつ手渡し、握手し、国への奉仕に感謝した。このコインを、私はとても大事にしていて、この瞬間は一生忘れられない出来事となった。心理学紀要(Psychological Bulletin)に1995年に掲載された論文によると、私たちは金銭にはすぐ慣れるものの、尊重されている感覚に慣れることは決してない。
3. コミュニティー
人間関係の中でのエネルギーの流れを考える際には、人と人との関わりによって活力を奪うのではなく、人々を刺激し、やる気と活力を高めることが大切だ。燃え尽きは人に“感染”することがあり、燃え尽きたリーダーはインフルエンザや風邪をひいたときと同じように、チームに燃え尽きをうつしてしまう。疲労や懐疑的な態度、無力感はチームに長期的な傷痕を残し、リーダーたちが全員そろって会社を辞めてしまうことさえある。
変化を起こす方法には、小さな気づきから始めることだ。多くの組織は変化(特に風土面の変化)に圧倒されてしまい、全く何も行動を起こさない。風土変革は、個人が「この企業での普通のやり方」を変えることから始まる。こうした行動はリーダーが手本にし、支援すべきものだ。例えば次のような行動を取ること。
・今よりも感謝の言葉を増やす(恐らく大幅に増やす必要がある)
・FAST(frequent=頻繁、accurate=正確、specific=具体的、timely=時宜を得た)なフィードバックをする
・仕事の割り当ては明確に指示し、燃え尽きを助長する「矛盾する要望」と「曖昧さ」という2要素を最小限にとどめるため、チームについて他の共同経営者や上級職と話す。
・建設的なフィードバックを通じ、学びに焦点を当てた双方向の対話をする。
・変化について従業員に周知を続ける
最後に、ストレスと燃え尽きについて企業内で議論し始めること。燃え尽きは、恐ろしいほどのスピードで多くの業界に影響を与えている。グループで燃え尽きについて話せば、一人でするよりもプレッシャーが減る。また、リーダーの様子を確認すること。とてもシンプルだが、誰もが忙しい状況ではあいさつなどの基本を簡単に忘れてしまう。
上司は「部下の前では自分を強く見せなければ」と思っているかもしれない。「調子はどうですか?」のような簡単な声掛けでも、深い会話につながるかもしれない。
燃え尽きは、離職の意思から患者の安全、仕事や生活の全体的な満足感など、あらゆることに影響する。企業の中で燃え尽きが起きれば、それがどのような地位の人であっても、重要な仕事がむしばまれてしまう。