一方、台湾にはライバルが少なく、フェイスブックの利用率は世界屈指の高さとなっている。フェイスブックのアジア太平洋担当副社長であるダン・ニアリー(Dan Neary)は先日、台北で開催したイベントで、台湾企業によるフェイスブック活用を強化するため、デジタル人材育成を支援することを発表した。
ニアリーによると、台湾は世界で最もフェイスブックの利用率が最い国の1つで、インターネットユーザーの97%がフェイスブックを利用しているという。
今回発表されたプログラムの名称は「メイド・バイ・台湾(Made by Taiwan)」で、台湾政府が進める、中小企業138万社の海外での認知度向上を支援する。フェイスブックとしては、広告収益の向上が見込める。
「台湾企業にとってフェイスブックは、海外の顧客にリーチする上でも最適な窓口だ。フェイスブックにとっては、より多くのマーケターが同社のサービスを利用することで広告収益や、有料サービス利用の増加が見込める」と調査会社IDCでマネジャーを務めるShirley Tsaiは話す。
フェイスブックの昨年の純利益は159億ドル(約1.8兆円)と、4年前の29億ドルから大幅に増えた。売上高は約400億ドルと、同じ期間で3倍以上に拡大した。同社の主な収益源は、ユーザーの個人情報に基づいたターゲティング広告だ。
台湾ではLINE以上の利用率
フェイスブックは、2014年から台湾で法人向け有料サービスの拡大に取り組んできた。ヤフー傘下のソーシャルメディア「Wretch」が2013年に閉鎖されたことに加え、同年に買収した「WhatsApp」の効果もあり、台湾で人気のLINEを上回るシェアを獲得することに成功した。
台湾は、高速ブロードバンドの普及率が高く、スマートフォンの利用者数は2300万人の人口を上回っている。地元メディアによると、2014年当時の台湾におけるフェイスブックのMAUは1500万人で、人口に対する利用率で世界1位だったという。
フェイスブックは昨年から非営利組織の「台湾貿易センター」とデジタル人材の育成に取り組んできた。同社の広報担当者によると、今後はこのプロジェクトへの投資を拡大し、2020年までに5万人の台湾人にトレーニングを実施し、1万5000社の海外展開を支援するという。
台湾政府も、フェイスブックが台湾企業の海外展開を支援することを歓迎しており、同社のイベントには蔡英文総統も出席した。「中小企業は我々の隠れたパワーであり、ソーシャルメディアによって彼らの認知度を高めることができる」と蔡総統は述べた。
台湾政府は、これまでのハードウェアの受託生産に依存した状況から脱却し、モバイルアプリやIoTなどを活用したソフトウェア産業の強化を推進している。政府は2015年に「台湾スタートアップスタジアム(Taiwan Startup Stadium)」を設立し、起業家が海外とのコネクションを築き、事業の海外展開を図るためのトレーニングを行ってきた。
また、2023年までにIoT分野のビジネスを活性化するためのビジネス・ゾーンである「アジアン・シリコンバレー(Asian Silicon Valley)」を開設した。