──キャッシュレス比率の向上のために、ほかにどのような方法が考えられますか。
デビッドカードやプリペイドカードの認知度を上げることです。日本は外国に比べて、クレジットカードの普及率が非常に高い一方で、デビッドカードやプリペイドカードについては認知度も使用率も低い。弊社では広告などを通じて発信に注力しており、2010〜17年の10年間では、デビッドカードの取引高は年平均70%近く成長しています。
最近は音楽サイトやゲームサイトからのダウンロードや、旅行前に一定額をチャージして現地で管理するタイプのプリペイドカードを利用する人も多いですね。使用の度にメールで通知が来るので管理もしやいのもメリットです。デビッドカード、プリペイドカードの利用者はまだまだ増えると考えています。
決済から生活全体の質を向上させる
──時代の移り変わりによって、使用される媒体にも変化があるということですね。
平昌オリンピックで販売された決済機能付きグローブ
はい。Visaはクレジットカード発行会社だと誤解されがちですが、正しくは、決済技術を提供するネットワークサービスの会社なのです。最近の「PoT(Payment of Things=決済のIoT化)」の流行は、多くの人々の決済体験をより便利にする良い傾向であり、私たちもそのためにしっかり対応していきたいと考えています。
もはや、「カード」という媒体に固執するつもりはありません。安全で便利な決済サービスの提供というミッションが第一で、そのためには弊社が培ってきたセキュリティ技術を生かした連携も進めていきたいです。
──決済の最適化が目的だから、カードにこだわらず最新の技術にも積極的に参画できる、と。
決済サービスは単独で成り立つように見えて、実はそうではありません。何らかの購買行動があって初めて「決済」という行動が発生するので、購買行動と決済のリンクが重要だと思っています。例えば購入商品をもっと効率的に選ぶことができたり、10個の商品のバーコードを一度に読み込んだり……。これに決済の改善が加わることで、買い物という体験はより便利で素敵なものになる。
最近は「より良い決済体験とは何なのか」を考えることが増えています。弊社としては色々なサービスにAPIを解放して、様々な企業に使ってもらえることようにしたいです。
政府の掲げる「2027年までにキャッシュレス比率を40%にする」という目標は、現在のアメリカと同じくらいの比率です。本当の理想は、どこの国を訪れても、あるいはどこの国の人が来日しても普段と同じ方法でストレスなく決済ができる状態。日本としては、東京オリンピックに向けてますます対応が求められるでしょう。
買い物での決済手段が変わるだけで行列に並ぶ回数はかなり減るし、スタジアムでも瞬時に決済できればゴールシーンの見逃しがなくなる。サッカー観戦の満足度も向上することでしょう。私たちが提供したいのは、遠い未来のことではなく、いまより半歩先にある快適で便利な生活なのです。