そんな中、今回のワールドカップ開催地であるロシアで、Visaが専用のウェアラブルデバイスをリリースしているのをご存知だろうか。元スウェーデン代表選手であるズラタン・イブラヒモビッチを起用し、現地での決済体験をより便利にしようとする取り組みだ。クレジットカード会社としての印象が強いVisaに、その導入背景と、彼らが見据える決済の未来について聞いた。
ウェアラブル決済端末の導入
──VisaはFIFAワールドカップのオフィシャルパートナーとして、旅行者に「新たな決済イノベーション」を提供すると発表しています。まず、その内容を教えてください。
現地において、一定金額があらかじめチャージされたプリペイド式のリングやリストバンドを販売しています。サッカー観戦はなるべく身軽な状態で楽しむことが理想なので、会場内の売店などでウェアラブルデバイスを対応のリーダーにかざすだけで購入でき、財布を持たず身軽に試合会場に行けるのが大きな利点。支払いにかかる時間も短縮されるので、買い物をしているうちにゴールの決定的シーンを見逃した、という事態も減らせればと思っています。
リング型のウェアラブルデバイスを専用の機器にかざすだけで決済が完了する
実は2018平昌冬季オリンピックでも、ペイメント機能付きのグローブやピンバッジを販売していました。今回はさらに規模を拡大し、リングを6500個、バンドを3万個展開しています。これは多くの方々に非接触決済を慣れてもらうのと同時に、パイロットテスト的な意味合いもあります。2020年の東京オリンピックの頃には、もっと非接触決済を一般的にしたいですね。
──会社として、ウェアラブルデバイスの普及を目指しているということでしょうか。
いま日本国民の総支出額に対し、キャッシュレス(現金以外)が占める割合は約21%。日本政府は、これを2027年に40%まで向上させることを目標に掲げています。Visaとしても、その目標達成に貢献するため、様々な取り組みを進めています。
今回ワールドカップに導入したようなウェアラブルデバイスは、そのための手段の一つ。例えば、アメリカでアスリートを中心に人気のスマートウォッチ「Garmin(ガーミン)」の決済機能は、Visaの支払いに標準対応しています。他にもApple Payなど、ウェアラブルデバイスでの決済は多くの人が使用するようになっていますよね。
これらのサービスは「非接触決済(顧客と店側の端末を無線でつないで決済する仕組みの総称)」に対応しています。いま私たちが注力しているのは、この非接触型決済の普及です。世界で発行されているカードの半分は、まだICカードを端末に差し込まないと支払いできない「接触型」なのが現状なのです。