5年間に及んだモーフィアスの建設には11億ドル(約1200億円)が投じられたという。メルコリゾーツ会長でCEOのローレンス・ホーは「このホテルは我が社のIR事業を代表するものとなる」と述べた。
モーフィアスの名前の由来は、ギリシア神話に登場する夢の神のモルペウスだ。建築デザインは東京の新国立競技場の当初案をデザインしたことで知られる、故ザハ・ハディドの傘下の企業が担当した。
このホテルは単一の円柱を使用しない、外骨格フレームのみを用いた特殊な工法で建設され、外壁のデザインは中国で縁起の良い数字とされる“八”の文字をあしらったものとなっている。モーフィアスは42階建てで、スイート及びヴィラを含む客室数は772室。地上130メートルの40階には屋外温水プールも設置されている。
メルコリゾーツはモーフィアスを、同社のマカオのカジノ業界におけるハイエンド戦略のシンボルとして打ち出す方針だ。メルコはこのホテルでジャンケット事業者(VIPルームにギャンブラーを仲介する業者)を用いず、自社のスタッフでVIP顧客らをもてなす。
メルコリゾーツによると同社の売上に占める団体客の割合はわずか5%程度だという。「当社のゲーミングエリアの顧客には身なりが良く、洗練されたマナーを身につけた人々が多い」とホーは述べた。
ローレンス・ホーは「マカオのカジノ王」の異名を持つスタンレー・ホーの息子で、2004年にメルコリゾーツを設立した。スタンレー・ホーは先日、SJMホールディングスの会長職を退き、娘のデイジー・ホーがその職務を引き継いだ。スタンレー・ホーは17名の子供を持っているが、そのうち3名が香港でカジ事業を行なっており、香港に6社あるカジノ運営元の半数を占めている。
日本のIRに1兆円以上を投資へ
スタンレー・ホーの2番目の妻と間の娘、パンジー・ホーはMGM中国の共同会長を務めている。
現在42歳のローレンス・ホーは父から受け継いだカジノビジネスのグローバル展開を進めている。メルコリゾーツは先日、キプロス共和国への進出を発表。欧州最大のIR施設を目指すと発表した。
メルコリゾーツが今後の有望なマーケットとしてとして見据えるのが日本市場だ。日本政府がカジノ解禁の動きを進めるなか、同社や他のカジノ運営元らは積極的なロビー活動を続けてきた。
ローレンス・ホーは過去に、日本のIR向けに100億ドル(約1.1兆円)以上の投資を検討すると述べていた。早ければ2020年にも実現が予想される日本のカジノ解禁に向けて、ホーは2週間に1度のペースで日本を訪れミーティングを重ねている。
ホーは中国政府とも深いつながりを持っている。彼は中国人民政治協商会議のメンバーで、中華全国工商業連合会のバイスチェアマンも務めている。ホーは自身が中国と日本をつなぐ役割を果たせると述べ、「これは我々にとってのアドバンテージとなる」と話している。