シュルツの指揮の下で、スターバックスは店舗数をわずか11から2万8000以上に増やした。そのシュルツが退任を表明した今、スターバックスにはどのような未来が待ち構えているのだろうか?
確実なことは誰にも言えない。だが、象徴的な存在だったトップが職を去るということは、過去にその他の企業でも起きている。先例があることが分かれば、スターバックスの株主たちも安心できるだろう。
シュルツは、ビジネス界以外にも影響を及ぼしたまれな企業リーダーの一人だ。文字通り、社会に変化をもたらした。同じことができる経営者は、多くはない。「スターバックスはシュルツがいない方が良くなる」と真顔で主張する人はいないだろう。実際に、そのようなことはない。ただ、スターバックスはシュルツを欠いても道に迷うことはないと考えることができる。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、ジョブズに代わることはできないと分かった上で、その後を引き継いだ。同様に、マクドナルドのレイ・クロックやウォルマートのサム・ウォルトンに取って代われる人も存在しなかった。
だが、幸いなことに他の誰にも、そのようなことをする必要はないのだ。伝説のCEOたちも、自分一人でその地位を築き上げるわけではない。そうではなく、彼らは自らの大義の下に多くの人を集めるための説得力あるビジョンを掲げる。企業がスターバックスほどのレベルにまで成長するころには、リーダーの遺産は社内の文化的DNAに十分に具現化されているものだ。
時間の経過とともに、その具現化されたものが薄れてしまう可能性もある。ジャック・ウェルチが去った後のGEでは、それが起きたと主張する人もいる。ただし、そうなるまでには時間がかかる。また、必ずそうなるというわけでもない。投資家たちは経営能力にとどまらず、より幅広い視点からスターバックスを評価する必要がある。シュルツの精神は、今後も同社に残っていくだろう。
スターバックスの今後のカギを握るのは、中国での事業拡大をいかに実行していくかという点にある。同社は2022年までに、中国国内の店舗数を現在の約3300から6000に増やす計画だ。
同社にとってもう一つ重要なのは、米国内の既存店の売上高だ。2017年度以降、客足はほとんど伸びていない。飲料の販売における利益率が低下していることからも、懸念される点だ。米国の消費者にとっての魅力を取り戻し、既存店売上高を3~5%増やすとした目標を達成するため、経営陣は食品・飲料部門の刷新を図ると同時に、デジタルプラットフォームの改善に注力している。
スターバックスは今後も、グローバルに成長を続ける企業として魅力を維持するだろう。シュルツ会長の退任は惜しまれるが、彼が築いた同社の体制は今後も変わることはなく、株主に利益をもたらし続けると考えられる。