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シネマの女は最後に微笑む

主演を務めたシャーリーズ・セロン(Photo by Gregg DeGuire/WireImage)

アメリカの国務省は、先月20日に発表した2017年版の人権報告書において、「日本の職場でセクハラが依然として横行している」と記した。皮肉にも丁度その頃、私たちが毎日目にしない日はなかったニュースと言えば、福田(元)財務省事務次官のセクハラ疑惑である。

特筆すべきはこの問題について、信じ難い政治家の対応、発言が相次いだことだ。

財務省から女性記者個人へ向けての真相究明協力要請を始め、麻生財務相、同省矢野官房長、下村元文科相、自民党長尾議員の発言が世間から激しい非難を浴びたのは記憶に新しい。

こうした状況の中で、28日には新宿駅前で多くの若者たちが、「With You」「どんな仕事でもセクハラは加害」「私は黙らない」などのカードを掲げ、抗議集会を開いて話題となった。

また30日には、MeToo運動のきっかけとなったハリウッド女優、アシュレイ・ジャッドが、セクハラを拒否したことで仕事の機会を逸したとして、ハーヴェイ・ワインスタイン氏を告訴している。

今回取り上げるのは、世界初のセクハラ訴訟の記録を元にした『スタンドアップ』(ニキ・カーロ監督、2005)。1980年代末のアメリカで、一人の女性炭坑労働者が職場のセクハラを告発し、裁判で勝利するまでを描いた話題作だ。

物語の進行に伴って断片的に挿入されるのは、ヒロインに不利な展開となる裁判前半の場面と、彼女の重い過去。それによって、被害者の立場がいかに過酷であるかが徐々に浮き彫りとなり、最後の裁判後半の場面で事態の全容が明らかになるという、サスペンスフルな作りになっている。

ミネソタ州北部の田舎町。夫のDVに耐えかね、二人の子どもを連れて家を出たジョージー(シャーリーズ・セロン)は、再会した友人グローリー(フランシス・マクドーマンド)から、鉱山で仕事していると聞かされる。州の鉱山で初めて女性が働き始めてから10数年後の当時、鉱山労働者の男女比は 30 : 1 とまだ圧倒的に男性が多かった。

17歳で望まぬ妊娠をし長男を出産してから父親と反りの悪かったジョージーは、ヘアサロンのアルバイトより高い鉱山の報酬に惹かれて就職を決めるが、娘が自分と同じ「男の職場」で働くことを歓迎しない父とは、ますます険悪な仲になる。

初日にジョージーが身を以て知らされたのは、職場の男性から女性へのセクハラが常態化しているという事実。すれ違いざまに「メスどもが‥‥」と呟いたり、卑猥な言葉を投げかけたり、ランチボックスに大人のおもちゃを入れて驚く女性の反応を楽しんだり。その中に、高校時代の恋人ボビーもいた。

憤ったジョージーは上司に訴えるが、まったく取り合ってもらえない。そもそもこの上司でさえ、セクハラ的言辞を口にしては「ユーモアだよ」と開き直り、裁判でも「女はちょっとしたことで騒ぎ立てる」「男ってのは女に迫るもんです」などと言う男なのだ。おそらく彼は、多くの男の代弁者として登場しているだろう。

直接セクハラをしない男たちも、同僚のセクハラを見て見ぬふりのこの職場は、社会の縮図である。その中で、日々厭な思いを味わいつつも諦めている女性労働者たち。

文=大野左紀子

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