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メルペイの青柳直樹CEO

3月24日発売、働き方について特集した「フォーブス ジャパン」5月号。テクノロジーの進歩によって多様な働き方が実現可能となった。時間、場所、お金、慣習——。既存の枠組みがディスラプションされた社会で、「自分らしい働き方」とは何なのか? 未来をつくるイノベーターと企業にそのヒントを探る。


昨年11月にメルペイ(merpay)のCEOに就任した、元グリー取締役の青柳直樹。1年間の休暇中に経験したことが、自分のキャリアを見つめ直すきっかけになったという。

昨年の夏、青柳直樹は70歳を超えた自身の父親とゴルフ場にいた。

彼の父はゼネコンに勤め、現役時代には橋やダムなど多くのインフラ事業を手掛けた。そのゴルフ場にも計画段階から携わっており、コースを2人で回った。

「親父がつくったものが、いまもこうして使われているんだなと、改めてリスペクトを抱きました」と彼は話す。

当時、青柳はグリーの取締役を任期満了で辞め、長期休養中だった。次の行き先は何も決めていなかった。その前年には2人目の子供が生まれたばかり。家族や両親とゆっくり時間を過ごすのは、社会人になってから初めてのことだった。

結果的にそれは「自分を見つめ直す時間になった」、と彼は振り返る。

「人生にとって何が重要なのか。その中で自分は何をしたいのか─。必要に迫られたからやるのではなく、内側から湧き上がってくる動機で次に向かいたかった」

シリコンバレーを圧倒する上海の衝撃

青柳は新卒でドイツ証券に入社し、4年後に上場前のグリーへ加わった。ソーシャルゲームの黎明期から成長期を経験し、米国法人時代はシリコンバレーに暮らして本場の起業文化にも触れた。

辞めた直後は個人投資家として活動していくことも考えた。その思いは、昨年8月に上海へ視察旅行をしたことをきっかけに、大きく変わることになる。

上海ではどんな小さな店にもQRコードがあり、スマートフォンによる決済の仕組みができていた。また、日本では馴染みのないシェアサービスも普及していた。ウーバー・チャイナを買収した配車アプリ「滴滴出行(ディディチューシン)」、自転車シェアの「モバイク」、傘をシェアする「摩傘(モーサン)」......。

「衝撃でした。シリコンバレーも圧倒していましたね」

じつは、この旅行には同行者がいた。メルカリCEOの山田進太郎だ。

山田との最初の出会いは2010年。最近では半年に一度くらいの頻度で食事をする仲だった。久しぶりに山田から連絡がきたのは、グリーを辞めると発表した直後のこと。「飯、食いましょう」というメッセージが届いた。青柳はそのとき、誘われるなと思ったが、「まだ色々と考えられないので」と断った。

その後、何度か食事を重ねた。ある晩、青柳が中国のスタートアップ事情を視察に行くと話したところ、山田から「中国に詳しい社員がいるから、アテンドさせますよ」と言われた。

「それならぜひ、と。そうしたら、後日、『僕も行くことにしました!』 というメッセージが届いて……。今から考えると完全に山田の策略ですね(笑)」

そして、上海を視察した最後の夜のことだった。山田に「一緒にやれたらいいな、と思っているんですよね」と言われ、決意を固めた。青柳はメルカリの執行役員に就任し、金融関係の新規事業「メルペイ(merpay)」を率いることになった。

「メルペイでは単にQRコードで決済ができる、といったことをするつもりはありません。Fintechが水みたいに当たり前になった先に、社会のインフラとなるようなサービスをつくっていきたい」

そう言うと、彼は笑った。「そうすれば、子どもたちにも自分の仕事を見てもらえますしね」


あおやぎ・なおき◎ドイツ証券投資銀行本部を経て、2006年にグリーに入社。11年に米国子会社のCEOに就任。2017年11月、メルペイのCEOに就任。メルカリの執行役員も兼務する。写真の自転車は、同社のシェアサイクルサービス「メルチャリ」。

文=稲泉 蓮 写真=宇佐美雅浩

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