つまり、LGやソニー、HTCといった企業はアップルやサムスンとの戦いに苦しんでいる。背景には世間の人々がiPhoneとGalaxyの2大ブランドのみが高額な出費にふさわしいと思い込んでいることがあげられるが、その責任の一端はアップルやサムスンの製品ばかりとりあげる大手メディアの怠慢さにある。
今後もLGやHTCがアップルやサムスンから市場を奪うことは難しい。一方で、彼らはiPhoneやGalaxyが高すぎて買えない顧客層にも、アピールするのは困難だ。なぜなら市場には既に膨大な数の安価な中国製スマホが、驚くほどの低価格で出回っているからだ。
筆者はここ数日の間、「UmiDigi 」というメーカーのS2 Liteと呼ばれる150ドルのスマホをテストしている。S2 Liteが搭載するチップはMediaTekの中級レベルのもので、それほどパワフルな端末とは言い難い。しかし、日常レベルの使用には十分で大容量のゲームも難なくプレイできる。
カメラの性能も低価格スマホの域を出ていない。だが、極細ベゼルのスクリーンを搭載したこの端末は、ボディも金属製で外観は十分見栄えがする。そして何よりも感心させられるのが、わずか150ドルの価格で顔認証に対応したことだ。
S2 Liteが採用したのは、iPhone Xに搭載された3Dタイプの顔認証ではない。この端末はセキュリティ面でやや劣る、2Dの顔認証をインカメラで実現した。しかし、筆者が実物大の自分の顔写真を用いてS2 Liteの顔認証を突破しようとしたところ、それは難しいことが分かった。
この端末の顔認証でのアンロックには1.5秒ほどの時間がかかり、スピードは遅い。しかし、S2 Liteの凄さは同時に指紋認証にも対応している事だ。ユーザーは状況に応じ2つの認証方法を使い分けることが可能だ。
さらに、このデバイスは5100mAhの大容量バッテリーを搭載している点も見逃せない。サムスンのGalaxy Note 8とほぼ同じ厚みのボディに、このバッテリーを搭載したテクノロジーは秀逸といえる。
中国の格安スマホの多くは4000mAh以上の大容量バッテリーを搭載しているが、発熱や出火といったトラブルはほとんど報告されていない。そんな中で、なぜ大手の製品は常に、3000mAhレベルのバッテリーしか搭載しないのかという疑問も浮かぶ。
S2 Liteはある意味で、今後のスマートフォン業界の向かう道を示す端末なのかもしれない。サムスンやアップル、ファーウェイらは今後も1000ドルを超える高額な端末を発売し続けるだろう。一方で、カメラの性能面以外では十分に高品質な中国の無名ブランドのスマホが、200ドル程度で市場に送り出されていく。
700ドル程度で販売されるソニーやHTCの端末は、今後ますます苦戦を強いられるのかもしれない。