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フォーブス ジャパン編集部 編集者

フラクタ、ラース・ステンステッドCOOと加藤崇CEO

「お前はダメだ」「そんな技術は求められていない」。日本人にノーと言われても世界は同じ視点で見ていなかった──。水道管×AIで米国100兆円市場を狙う、起業家の挑戦。

2つのレトロな電灯に掲げられた緑の地色にクリーム色の文字「REDWOOD CITY」の看板をくぐると、スーパーマーケットやメキシコ料理などの小さなレストラン、グロッサリー店、コーヒーショップなどが並ぶ。2階建ての建物の玄関の呼び鈴を鳴らすと、CEOの加藤崇自らが小さなミーティングルームに迎え入れてくれた。

「(COOの)ラースさんとは、毎朝一緒にコーヒーを飲んで、3時にはヨーグルトを食べに行き、一緒に歩いて仕事のことを色々話すんです。彼がとても好きな小説があって。ジョン・グリシャムの『TheBrethren(邦題:裏稼業)』という小説なんですが」

『The Brethren』は、刑務所に入れられた3人の元判事の犯罪者の話だ。ラース・ステンステッドにその小説について聞くと、こう話してくれた。

「基本的に、彼らは刑務所にいて時間があるので、歩いて、考えるんです。そしてFBIを打ち負かす非常に賢いアイデアを思いつく。ポイントは、とてつもなく歩いて考える時間があるから、彼らは負けない。歩いて考える時間があれば、物事を変えることができるんです」

フラクタは、2017年5月加藤崇とラース・ステンステッドによって日本のロボット企業からバイアウトして設立された。機械学習のアルゴリズムによって、全米で劣化が問題視されている水道管の状態を評価し、設備更新投資を最適化するソフトウェアの開発を行っている。

全米の地中には、約100万マイル(約160万km)の水道管が埋まっており、そのほぼ全てが30年後には寿命を終え、2050年までに合計110兆円もの巨額な設備投資が必要と言われている。いつかは必ず来る大きな社会問題に、日々蓄積される膨大なデータとパターン解析によるアルゴリズムで解決に挑むのが、現在フルタイム6名、パートタイム4名のチームからなるフラクタだ。

当初はロボットを使った配管検査の技術を売り込んでいたが、市場を回り、多くの人と議論した結果、あるタイミングでソフトウェアに大きく舵を切った。技術面で大きく支えるのは、スタンフォード大学で研究員を務めていた日本人エンジニアでCTOの吉川大地だ。

その日の朝、コーヒーを飲み、歩きながら話していたテーマは、いかに販路のチャネルを広げるか。例えば、地面の上を歩いて超音波センサーで水道管の劣化を調べている業者がある。フラクタの技術でスクリーニングして、調査する場所をある程度特定できたら、効率的ではないか─。

文=岩坪文子 写真=小田駿一

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