そんなポリシーのもと2016年に発足したアワード、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017」が2017年12月21日、六本木のザ・リッツ・カールトン東京で開催された。
国内企業1000社の人事担当者や人事担当役員およびビジネスパーソン1000人を対象にアンケートを実施し、これらと一般投票から選出された企業・個人を評議員が審査し、いま最も女性が輝ける企業、最も輝いているキャリア女性を、「個人部門賞」「企業部門」として表彰した。
女性が真の意味で“活躍”できる社会をサポートすべく発足した本アワードは今年で2回目。登壇した本誌編集長の高野 真。
仕事と私生活を切り分けた上で両者を調和させる「ワークライフバランス」や、仕事と私生活を一体化させる「ワークアズライフ」など、女性に限らずとも、生活と仕事に関する議論が活発化している。その答えが一人一人異なるのはもちろんだが、女性の場合は出産や育児など、さらに多くのファクターから最適解を探さなければならず、その過程でどちらかを諦めてしまう人も少なくない。そんな中、受賞者は、葛藤を抱えながらも理想の追求を諦めず、企業もそれを積極的にサポートしてきた。
特別ゲストには、日本人女性で2人目の宇宙飛行士としてディスカバリー号に搭乗した「ママさん宇宙飛行士」こと山崎直子を迎えた。本誌編集長・高野が「優れたバランス感を持つ母親」と評するように、理系女子でありながら多様な表情を見せた。
「いままで地球から宇宙を見上げていたが、宇宙からは地球を仰ぎ見る。これまでと違う視点があった」と山崎氏。
スペシャルキーノートとして、シリコンバレーで活躍する2人の日本人女性から、ビデオメッセージが送られた。グーグルの研究機関グーグルXの共同創業者であり、ネストの創業者兼CTOも務める松岡陽子と、女性起業家の育成支援に特化したWoman’s Startup Lab CEOの堀江愛莉だ。
男性中心的で実力主義のシリコンバレーで、「女性が声を上げると大声を出していると思われてしまう。話を聞いてもらいたいが、挑戦的だとは思われたくない」と、周りに与える印象について常に葛藤を感じてきた松岡。厳しい環境の中でワークライフバランスに悩むことも多かったが、一度きりの人生で社会に最大限貢献するためには事業に専念すべきだと考えた。
時に子どもに授乳しながら会議に参加していた松岡は、日本人女性に「意思があるならきっと周りが助けてくれる。頑張りすぎずに頑張ってほしい」と語る。堀江は、「日本の女性は毎日家事をするのが良い母親だという環境で育っているが、キャリアの時代にそれは大きすぎる要求。過度な期待をせずに頑張ってほしい」とメッセージを送った。
本アワードでは、「個人部門」と「企業部門」があり、前者では企業で輝く5人の女性が、後者では、女性の真の活躍を推進する全39社が受賞。参加者はは終了後も親睦を深め、この中から更なる改革者が現れることを予期させた。
以下、受賞者のコメント、受賞理由を抜粋して紹介する。*アワードの詳細や受賞者へのロングインタビューはForbes JAPAN 2018年2月号(12月25日)でも特集。
<個人部門賞総合ランキング>
いかなる時代でも、社会の潮流を動かすのは強い信念と自分の役割を見極めた改革者だ。個人部門賞総合ランキングでは、様々な方面に影響を与える女性を5つの部門ごとに表彰した。
【グランプリ】
山田メユミ(アイスタイル取締役兼CQO)
「40代となった現在でも人生の道に迷いながらできることを追求している。ステレオタイプとは違った形で活躍する女性が増えて、子どもたちに夢を与えるのが理想」
[受賞理由]1999年に美容総合サイト「アットコスメ」を運営するアイスタイルを共同創業後、40歳の時に経験した第一子の出産を機に、仕事とプライベートを分けていたこれまでの生活を一変。自身の経験をもとに、新たな働き方の実験的な取り組みを行うISパートナーズを起業。次世代へと繋げていることを評価。
【ヒットメーカー賞】
金高恩(JapanTaxi CMO)
[受賞理由]現金決済が当たり前だったタクシー業界で、ネット決済機能「Japan Taxi Wallet」をリリース。他に、突発的な陣痛に苦しむ女性をかかりつけ医まで運ぶ「陣痛タクシー」など、男性中心の業界で女性ならではのサービスを多く開発している点を評価。
【キャリアチェンジ賞】
江原なおみ(サイボウズ 広報)
[受賞理由]新卒で入社したソニーを、海外赴任を機に退職。2人の子どもを出産した後に採用されたサイボウズでは、子育て経験を活かして働きやすい環境を整備。在宅勤務などを活用して自身、子ども、会社にとって無理のないワークスタイルを率先して実践している。
【ルーキー賞】
新居日南恵(manma 代表取締役社長)
[受賞理由]大学院生として「家族の組織論」を研究しながら、同世代に学びの場を提供する学生団体manmaを法人化。キャリアと家庭の両立という若者世代の常識でありながら実現の難しいテーマについて情報発信と模索を行なっており、将来より一層の活躍が期待される。
【チェンジメイカー賞】
古田理恵(フェイスブックジャパン クライアントソリューションズマネージャー)
[受賞理由]海外支社に比べて産休取得数が少ないなど、女性の働き方が固定化されていたフェイスブックジャパンで、保育園探しを手伝う「育児コンシェルジュ」など、複数の社内制度を打ち立てる。承認フローが複雑なグローバル企業の制度に積極的に切り込んでいる点が評価された。
<企業部門・規模別ランキング>
女性が輝ける企業を従業員数の規模ごとにランキングを形式で表彰。グランプリ受賞企業は、以下の通り。
トロフィーを受け取った受賞企業代表者。左から、FEEL CONNECTION代表取締役社長・橋本英治、イケア・ジャパン代表取締役社長・ヘレン・フォン・ライス、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス代表取締役・北島敬之。
【1000名以上】
第1位:イケア・ジャパン
「この受賞は女性だけでなく男性、そしてお客様全てにとって大きな意味がある。イケアは従業員をコワーカーと呼び、全員に素敵な才能があると信じている。ジェンダー・ギャップを埋めるのは、全員の責任だ」(代表取締役社長・ヘレン・フォン・ライス)
【300名以上1000名未満】
第1位:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス
「昨年に続いての受賞は大変ありがたい。老若男女、全ての人にとって働きやすい環境をつくることこそが、女性のための環境つくりにつながるはず」(代表取締役・北島敬之)
【300名未満】
第1位:FEEL CONNECTION
「まだ立ち上げてから日が浅いが、これから規模が大きくなる中でも変わらずに女性が輝き続ける会社であることが大事だと思っている」(代表取締役社長・橋本英治)
<企業部門・部門別ランキング>
女性が働きやすい環境づくりを推進する企業は多いが、適切な環境は会社の規模ごとに異なる。部門ごとに「グランプリ」「準グランプリ」「特別賞」を表彰。
【働き方改革賞】
リモートワークの促進や休暇制度の充実・副業の奨励といった、働き方改革に注力している企業を表彰。グランプリのユニリーバ・ジャパンは、働く場所や時間を自由に選択できるWWA制度に代表される多様な働き方への対応を20年以上前から積極的に推進してきた。
グランプリ:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス
準グランプリ:オリックス
特別賞:キャスター
【人材開発賞】
キャリアサポートをはじめとした仕組みで、積極的な人材開発に取り組んでいる企業を表彰。1998年から女性が自らキャリア課題を分析した上での施策提言を継続してきたのが、グランプリの日本IBMだ。
グランプリ:日本IBM
準グランプリ:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン
特別賞:第一生命保険
【ビジョン推進賞】
トップダウンによる改革を拡張させ、業界を牽引する企業を表彰。グランプリのストライプインターナショナルは「大切な人休暇」「イクメン推進休暇」などスタッフの声を形にした制度や、業務外での社員コミュニケーションの仕掛けなど、ビジョンに基づいた多様な施策を行う。
グランプリ:ストライプインターナショナル
準グランプリ:イケア・ジャパン
特別賞:カルビー