陸路ミラノ・マルペンサ空港へ
そんなクラフツマンシップが充満した工場で完成した「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」は、トラックに積まれ、陸路ミラノ・マルペンサ空港へと向った。
ミラノ・マルペンサ空港では、旅客機のターミナルから少し離れたエアカーゴの待機スペースに28台のマセラティが並べられ、飛行機の到着を待った。エアカーゴ内部の構造の関係で、一台用の台車に載ったクルマが2台、残りの26台は二段重ねの台車に載せられている。つまり、輸送するエアカーゴには、15もの台車が載せられるということだ。
そうこうしてるうちにエアカーゴが到着。今回の輸送を行うのは、ロシアのエアブリッジカーゴ航空のボーイング『747-400ERF』にマセラティロゴを施した機体だ。
機体の内部には、もちろん座席はなく、貨物だけが積めるように空洞である。床に台車が転がるようにレールを走らせているだけである。
その747のいわゆる1階スペースに「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」が、2列縦隊で載せられていく。搬入口は後部側面である。まず、一台の台車を2つ。これは内部の最前列の天井が低くなっていることからの処置である。その後に残りの15台が続く。すべての台車がフロントから入り、45度回転させることで、キレイに収まっていく。
当初はどれくらいかかるのだろうか、と思われた積み込みも、スタッフの手際の良さもあって、2時間かからずに終了。そして、28台のマセラティは、ロシアを経由して成田へと飛んだのだった。
今回の空輸は、エアブリッジカーゴ航空とアジリティイタリア、そしてマセラティジャパンの3社のコラボレーションによって行われたもの。そして、成田空港でのイベント会場となったデルタ航空の協力もあった。
アジリティイタリアのローラ・センドラ氏によると、今回の空輸は2つのチャレンジがあったという。
「ひとつは、機体に十分な余裕がないと一度に28台のクルマを運ぶことが出来ない。そこで、747の機体にその場所を確保しなければいけなかったこと。もうひとつは、安全にそして安心出来る方法で、決してクルマを傷つけることなく輸送するということです」
もちろん、それ以前にイベントを含め、これらをまとめたマセラティ ジャパンの大変さは、想像に難くない。なんといっても、場所が空港である。日本は、そのあたりの規制がとくに厳しいからである。
そのことをマセラティ ジャパンのグイド・ジョバネッリ代表に聞くと「難しかったですが、いろいろあるのでやめときましょう(笑)」という返事だった。
こうして自動車におけるチャーター機空輸、そして、成田空港のデルタハンガーでの発表会と初めてずくしの一大イベントは、大盛況のうちに幕を閉じた。