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2017.12.07 08:00

幻覚キノコにうつ病治療効果、脳の「リセット作用」か

Kichigin / shutterstock.com

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うつ病患者の症状を和らげるには幻覚剤が特効薬になるのではないか。そんな仮説を裏づける研究成果がこのところ相次いでいる。LSD やMDMAを含む幻覚剤は物議の的だが、研究者たちはこの分野に関心を深めている。
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インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、マジックマッシュルームの幻覚成分「シロシビン」が持つ、慢性のうつ病の治療効果に関するレポートを10月に発表した。その結果、適切な分量を摂取した場合、シロシビンが脳内の関連部位を“リセット”し、数週間にわたってうつ病の症状を抑える作用を持つ可能性が見えてきた。

研究チームは従来の治療法では改善が見られなかった患者らに対して、シロシビン10mgと25mgを1週間の間隔をあけて投与した。そして、投与前後の脳をfMRI(磁気共鳴機能画像法)で解析し脳内部位の変化を計測した。

結果は驚くべきものだった。ストレスや恐怖、不安の反応を引き起こす扁桃体部位の血流が著しく低下したのだ。さらに、それ以外の脳内部位の血流にも安定が見られた。
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「従来の治療では効果をあげられなかったうつ病患者に、シロシビンを投与すると脳の血流が明確に変化することが、今回の研究で初めて明らかになった」と、研究チームを率いるロビン・カーハート・ハリス博士は語った。

患者たちからは投与後5週間にわたり、気分の高揚やストレスの減少、症状全般の改善があったという報告が寄せられた。研究チームはそれらの発言を脳のスキャン結果と結びつけ、うつ病の症状を引き起こす脳内部位群がリセットされたと結論づけた。

「脳の『デフラグ』や『再起動』など、コンピュータ用語で効果を語る患者が何人かいた。シロシビンは彼らに、うつ病で落ち込んだ心理状態から抜け出すためのキックスタートのような効果を与えたのかもしれない」とハリス博士は述べた。

ただし、今回の研究は被験者の人数が少ない上に、対照群(投与群に似た背景を持ち、実薬を投与されない被験者)が存在しなかったことは指摘しておくべきだろう。今後、より多くの患者を対象に、さらなる研究が進むことを期待したい。それでも、幻覚剤がうつ病治療の特効薬となりうる可能性が示されたことは、大きな成果だ。

編集=上田裕資

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