ビジネス

2017.12.04

「境界をまたぐ」中国人連続起業家の挑戦

DONG LU

日本、そしてスタンフォード大学への留学、中国での起業・バイアウトを経験。その後、訪日観光客向け飲食予約サービス「日本美食」を立ち上げた。米中日で経験を積んだ連続起業家は、なぜいま、日本で起業したのか。


「いま、タイムマシン経営のモデルはアメリカではなく中国です。欧米や日本の優れた企業が中国市場で成功できないのは、彼らが考えている以上に中国の起業家が強いから。中国で勝つビジネスモデルは世界一強い」
 
訪日外国人観光客をコアターゲットに、案内・予約・決済サービスを飲食店へ提供しているスタートアップ「日本美食」。2015年12月に同社を創業したCEOの董路(ドン・ルー)は、同サービスで“中国流”を取り入れている。小売店の82%が現金決済のみで、予約客のドタキャン対策がされていない日本において、中国で主流となっているQRコード方式のスマホ決済や事前予約決済を導入している。

「観光客と飲食店、双方の満足度を引き上げるプラットフォーム役を担いたい」
 
1993年、20歳の時に董路は日本へ留学。埼玉大学を卒業後、ゴールドマン・サックス、スタンフォード大学のMBA留学を経て、04年に中国へ帰国。戦略コンサル会社やベンチャー投資業を渡り歩いた後、06年にアパレルEコマース企業を設立した。

「私の人生のキーワードは競争優位性。インターネット勃興期にその中心であるシリコンバレーに身を置き、その後、中国にて米国流で起業を経験。そこには日本での経験も生かしました」

08年には、中国版ヴィクトリアズ・シークレットを目指し、2社目のベンチャー企業La Miuを立ち上げた。「東京発下着」をスローガンに、日本でデザインして中国で製造・販売するSPAモデルを構築した同社は、計30億円の資金調達を行い、中国ナンバーワンの独立系ECランジェリーブランドへと成長した。その一方で、リーマン・ショックの影響により、社員が300人から100人まで急減する低迷期も乗り越え、黒字化に成功、最終的に事業売却した。そんな董路が、次に選んだ分野が日本での食ビジネスだ。なぜかー。

「君たちが目指すのはmake a difference。それによってmake moneyできるが、逆の流れは起こせない。スタンフォード大学で特に印象に残った授業の一幕です。私が巻き起こせるmake a differenceは何か。そう考えた時、起業家が少なく訪日外国人が増えていく日本で、日米中でのビジネス経験のある自分にしかできないことがあると思ったんです」


DONG LU(董路)◎1972年、中国・北京生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス、スタンフォード大学を経て、中国で2社のベンチャーを立ち上げる。z2015年12月、日本美食を設立。

文=土橋克寿 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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