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2017.12.09

南アフリカ・ワイン:その魅力に迫る5つのキーワード

テーブル・マウンテンからの絶景(2017年3月撮影)

アフリカでもワインが作られている。それも高品質なものだ。

アフリカ大陸の最南端にある南アフリカは、世界7位のワイン生産国。過去5年で、ワイン生産量は20%以上の増加。輸出も順調に伸びている。近年、グローバルに注目されているワイン産地であるが、実際に訪れてみて、その品質、個性的なワインと可能性に改めて感銘をうけた。

今回は、5つのキーワードで、その魅力を紹介したい。

1.歴史:民主化により品質が向上した

ブドウ栽培の歴史は長い。かつては、国営企業によりワインの生産・販売が統括されていた。大量生産が基本で、品質は必ずしも良くなかった。1994年のアパルトヘイト廃止後、ブドウ栽培やワイン作りも、新たな局面を迎えた。外国からの需要が戻り、新たなワイナリーが次々と生まれ、品質と技術が急速に向上した。

現在では、多様なワインが生産されており、大手企業だけではなく、小規模生産者や次世代の醸造家たちの動きも盛ん。ブドウ栽培に適した土地を求めて、リサーチや実験的試みも行われており、新しい生産地の発掘にも取り組んでいる。今後の変化も楽しみなワイン生産国だ。まだ品質に比べて、お値段のお得感があるのも魅力の一つ。

2.気候・風土:世界遺産のケープ・フラワー王国

ワイン産地は、ケープタウンの街を含む、西ケープ州(Western Cape)に集中している。暑い夏と温暖な冬の地中海性気候。南極からのベンゲル寒流の影響で、暑さが緩和され、ブドウ栽培を可能にしている。

西ケープは、「ケープ・フラワー王国(Cape Flower Kingdom)」と呼ばれるほど、生態系が多様で、9000種以上もの植物が生育している。2004年にユネスコの世界遺産にも登録された。ブドウの栽培も、その生態系を壊さぬよう、持続可能な栽培方法が推奨されている。

ウォーカーベイ地区のブドウ畑

3.開発援助とフェア・トレード

南アフリカは、「フェア・トレード」ワインの最大生産国でもある。フェア・トレードのワインを生産する「Uni Wines」というワイナリーを訪問して話を聞いた。「適正な価格で取引する」という概念のみならず、ブドウの栽培にあたって、労働者の雇用や労働条件を保証し、その住居や労働者の子どもの教育等も提供して、労働者のコミュニティの育成をするという、ワインを使った開発援助のモデルだった。

4.テーブルワインから高級ワインまで

白ワインは、シュナン・ブラン、ソービニョン・ブラン、シャルドネなどから作られる。特に、シュナン・ブランは、長い間、南アフリカを代表する品種であり、近年、減少傾向ではあるものの、今も最大栽培面積を誇る。フレッシュ・フルーティで軽やかな飲み口のワインから、澱とともに熟成したり、樽を使って重厚に作られたものまで、多様なスタイルがある。

「Sadie Family」のワインなど、100年以上の古木のブドウから生まれるワインは、非常に低収量のブドウから、凝縮した味わいのワインが作られる。世界でもトップクラスのワインだ。

黒ブドウは、シラーやカベルネ・ソービニョン、ピノ・ノワールなど。代表的な産地であるステレンボッシュ地区では、高品質なシラーやカベルネが生産される。例えば、「Starke Conde」の赤ワインは、しっかりした作りではあるが、若いうちから楽しめる、バランスが取れたワイン。

そして、南アフリカ特有のブドウ品種であるピノタージュ品種のワインも個性的だ。この品種は、ピノ・ノワールとサンソーの交配種で、赤系フルーツを中心に、少し化学的な香りが出るのが特徴。
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文=島悠里

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