そんな中、ブルーシーフードガイドは、米国モントレーベイ水族館が行う持続可能な水産物のレーティングプログラム「Seafood Watch」をお手本に、比較的資源量の豊富な魚介類の優先的な消費を推奨するプログラムとして2013年に発足した。あの成田山での衝撃的な瞬間の翌年のことである。
お手本のSeafood Watchが信号機の3色で「Best choice:最善の選択」「 Good alternative:良い代案」「Avoid:食べるな」の三種類に分類しているのに対し、日本のマーケットへのポジティブな意識啓蒙を目的としたブルーシーフードガイドは、食べてはいけないという記述はなく、水産庁発表の資源評価表をベースに、比較的資源量が豊富でお勧めできる魚種のみを掲載している。今後は第三者機関による科学的検証の強化が課題だ。
2013年にブルーシーフードガイドを発表した頃から軒並み海外からの注目が日本に向けられてきている。ロックフェラー夫妻が先陣を切った形で、パッカード財団、ウォルトンファミリー財団などの財団や個人篤志家、The Nature ConservancyやEnvironmental Defense Fund、Ocean Outcomesといった海外NGOも続々と日本に上陸している。
それほどに日本は世界から是正が必要とみなされているのだ。海洋環境保護というと日本ではクジラやイルカの問題で世界から糾弾されるのがオチだと思われがちだが、そうではない。刹那的な漁業で枯渇する水産資源の持続可能な消費への転換を求められている。
東京五輪に向けて、正念場に
とりわけ、2020年東京オリンピックでは持続可能な食糧調達方針が求められており、日本の動向が注目されている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は一定の調達方針を発表した。しかしその水産物の調達方針は国連FAOの「持続可能な調達基準」を満たしておらず、ロンドン、リオの五輪で定着したレガシーを継承できていないため国内外から批判が噴出しているのが現状である。
国際漁業認証(MSCやASC)を取得した水産物はFAOのガイドラインに沿った持続可能性が証明されているが、国内では現在、北海道のホタテ、宮城のカキ、京都の赤カレイ、宮城の一本釣りカツオとビンチョウのみしか認証がない。新たな認証取得には1千万円単位の費用と2年余りの時間を要するというハードルが申請者を悩ませる。
小池都知事は前述のレセプションでも「東京オリンピックはサステナブルでなければいけない」とスピーチをされた。開催まであと1000日を切ったいま、国産水産物の持続可能性とその証明を国際水準に高めるべくオールジャパンで多角的にサポートすることが重要なのではないか。
市民にも貢献できることがある。持続可能な水産物を優先的に消費するという食の投票行為でムーブメントを支持することだ。
世界が今、海洋資源の持続可能な利用に向け正念場に立つ日本を応援している。ロックフェラー夫妻もまた、来年も日本に帰ってくると約束して、トランプ大統領と入れ替わりに日本を発った。