モチベーションがないと動けないのは二流、現代的「惰性」のすすめ

左から、けんすう、落合陽一、前田裕二、尾原和啓


──私は、いわゆる「達成欲求」で仕事をしてきました。100年生きるとして、残り50年、何をしようかと考えているところです(50代男性)。

落合:私がもし50代だったら。仮想通貨の取引所に高齢者のお金を流し込むというビジネスをやりたいですね。キャッシュには手数料のような現金税がかかるので、お年寄りのタンス預金を仮想通貨上で流動的なものにしたいです。

尾原:将来的な市場の話であれば、VR(仮想現実)もまだまだ伸びそう。以前、「WEB2.0」という言葉がありました。昔のインターネットは、ダウンロードのみでした。口コミ形式のWEBサイトが流行り、誰もがアップロードをできるようになったとき、WEB上の情報の価値がぐんと上がったのです。

同様に、現在のところVRは、作り手が見せたいものを見せるだけ。それに体験者の主観を加えられるようになると、VR市場に革命が起こると思います。

けんすう:僕は、音×AR(拡張現実)に関心がありますね。今は情報に重力がないので、音と3次元の組み合わせは面白いと思います。例えば、会議の中の重要な発言がARの画面上で上の方に表示されるとか。

──最近マネジャーに昇格し、世代間のモチベーションの狭間で悩んでいます。部長は事あるごとに「意義は何だ。利益は出るのか」と理詰めするのに対し、部下は「まずやってみましょう」とフットワークが軽いのです。私としては部下のスタンスを応援したいのですが。昔の定義を教えることも必要でしょうか
(30代女性)。

けんすう:上の世代は、必ずしも意味付けをしないと若手は動かないと思っているのだろうか(笑)。

落合:サイコパスになることじゃないですか。実は、オフィス能力としては重要です。上司には上司のゲーム盤、若手には若手のゲーム盤があります。すべてのロジックを通すことは無理だし疲れるので、別のフィールドと捉えていいと思います。

e

尾原:そうですね。みんな自己責任で生きているので、やり方を提示することは良いことですが、問題空間は大きくしすぎない方がいいです。それぞれの世代を尊重して、世界観は壊さない方が賢明かと。

現代社会は「大きな意味合いを探す」呪いにかかっている人が多いです。それが好きなのか、得意なのか、お金をもらえるのか、どれかがないと「意味合いの呪い」に潰されます。他人の呪いに巻き込まれるより、処世術としてそれぞれに夢を見せてあげるというのも、一つだと思います。


尾原和啓◎執筆・IT批評家。京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、グーグル、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を歴任。現在13職目 、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。近著『モチベーション革命』はアマゾン ビジネス書一位。

落合陽一◎筑波大学学長補佐/図書館情報メディア系助教・Pixie Dust Technologies CEOの他複数の客員教授・理事を兼任。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了者)、博士(学際情報学)。プリアルスエレクトロニカ、ワールドテクノロジーアワードなど受賞。ザンガレンシンポジウム明日のリーダー200人、ベスト知識人40人、世界経済フォーラムグローバルシェーパーズに選出など。

前田裕二◎SHOWROOM代表取締役。1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。DeNAに入社し、13年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。

けんすう◎nanapi代表。19歳で学生コミュニティ「ミルクカフェ」、22歳で掲示板「したらばJBBS」運営企業の社長になり、Livedoorに事業譲渡。その後リクルート社で3年ほど新規事業を担当し、2009年から現職。2014年にKDDIに売却。

構成=ニシブ マリエ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事