マーケティング的に、世代観の境目といわれる36歳の“上の世代”が達成や快楽を求めるのに対し、その“下の世代”は意義への比重が高い。モチベーションが異れば悩みも異なる。さらに一緒に働くとなれば齟齬も生じる。実際にビジネスパーソンたちはどんなことを抱えているのか。
本の出版記念イベントに登壇したメディアアーティストの落合陽一氏、SHOWROOM代表の前田裕二氏、nanapi創業者のけんすうこと古川健介氏、尾原氏が、来場者のリアルな課題に進言した。[第1回記事|第2回記事]
──尾原さんは「自分の好きなものを極めていく」ことを著書の中で推奨されています。それとは別に、世界に必要とされているものを察知し、ミッション感を高めて遂行していくというアプローチ方法もあるのではと思っています(20代男性)。
尾原和啓(以下、尾原):まず本を読んでいない方のために説明をすると、この本では次のようなことを書いています。クライアントは、自社でやるより質が高くて早いものにお金を出します。では、質が高くて素早い仕事をするためには。
僕がすすめるアプローチ方法は、好きなことをしているときは苦労が苦労じゃない、という理論で成り立っています。「生きがい」は、自分が好きなもの、得意なもの、儲かるもの、世界が求めているもの、この4つが重なったときに生まれるもの。好きで続けていると、それが「得意」になる。得意になると「効率的」な方法を編み出せる、という矢印ですね。
前田裕二:新規事業の相談をされることがよくありますが、事業アイデアを持ってくる人には大きく分けて2パターンいます。自分の内側を見つめて、そこから「俺は絶対にこれをやりたい!」と、価値観が染み出すように事業のアイデアが出てきている人。そして、質問者さんのように、社会という自分の「外側」を俯瞰して、「この市場は大きく成長するだろう」という市場性仮説のもとで事業モデルを作る人。
成功したいという「達成」や「快楽」の欲求が強い人であれば、後者の立ち上げ方ができると思います。でも、個人的なおすすめとしては前者です。市場性から事業のタネを探すより、自分の内側を見つめた結果浮き彫りになった価値観を強く打ち出す形で立ち上げた方が、起業家として幸福度が高まると思っています。
落合陽一(以下、落合):そういう風に考えている時点で、あまりやりたくないのかもしれませんね。僕は、呼吸するように研究しているので。
けんすう:前提から覆すようですが、最近そもそもモチベーションなんていらないのではないか、と考え始めました。モチベーションがないと動けないのは二流だと思います。キーワードは「習慣」。人間って、ストレスが溜まるときほど習慣に依存するものです。だから「やっている状態」を習慣にできるかどうかが重要なのでは。
落合:分かります。習慣は悪く言うと「惰性」ですが、惰性で研究できるようになることを、僕のラボでは目標にしています。息をするように論文を書くという。
尾原:モチベーションには、快楽や社会的意義といったポジティブな要素があれば、ネガティブな要素もあるという理論もあります。「怒られたくない」という恐怖、感情的・経済的プレッシャー、惰性もそれに当たりますね。ネガティブなモチベーションも、確実に人を動かします。