はっきりいって、腕時計においてフォーマルシーン以外で明確にコレ!という基準はない。というわけでここでは、「こんなシーンで、こういった状況なので、このようなモデルが相応しいのではないか」ということを想定して述べていきたい。
今回想定するのは、ビジネスシーン。
最近はカジュアル化も進み、スーツにタイドアップというスタイルが必ずしも定番ではなくなってきているが、ここはビシッとスーツスタイルだと想定しよう。それも社内ワークではなく、商談や大切なプレゼンテーションといったシチュエーション。となると、英ロンドンのビジネスマンの定番でもあるネイビー、もしくはチャコールグレーのスーツスタイルにあわせるということになる。
イメージは精悍、シャープ、信頼……。このようなシチュエーションで、まず間違いないのは、ラグジュアリー・スポーツ・ウォッチと呼ばれるカテゴリーのモデルである。
これは1970年代初頭に台頭してきた腕時計で、素材はステンレススチールだが高級、スポーティだが薄い、ストラップのメインはブレスレットという、当時としては、それまでの常識を覆すかなり革新的な腕時計だった。
それが40年以上の時を経て、時計界には欠かせない人気カテゴリーとなっている。デザインの美しさに加え、いわゆるドレスウォッチにはない力強さ、そして、行動的なイメージがあるからだろう。多くのビジネスパーソンに愛され、成長してきたカテゴリーでもある。
そして、もうひとつ重要なのが、ケースが薄いというところだ。これはフォーマルシーンにおけるドレスウォッチと同じで、スーツの袖口に美しく収まるということが重要であり、着こなしの観点からも押さえておく必要があるのだ。袖口は、襟、裾と同様に、スーツスタイルの着こなしには欠かせないポイント。ここを美しく見せるかどうかで、全体の着こなしにも影響が及ぶからだ。
つまり、このカテゴリーのモデルを選ぶ際は“薄さ”というのは大きなポイントになる。ケースを薄くするというのも大変な技術なので、薄いモデルがあるということは、技術の高いトップブランドだという証だとも言える。
このラグジュアリー・スポーツ・ウォッチは、スーツスタイルとの相性がよく、ベストマッチなのだが、腕時計において唯一の万能時計でもある。フォーマルの基準は満たしていないものの、スーツスタイルからカジュアルまで、あらゆるシーンを十分にカバーできてしまう。1本持っておけば、とても重宝する腕時計なのだ。
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AUDEMARS PIGUET / ロイヤル オーク・オートマティック
1972年に誕生した、元祖ラグジュアリー・スポーツ・ウォッチ。舷窓をモチーフにした八角形のベゼルが特徴だ。[自動巻き、SSケース、41mm径、180万円 問:オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000]
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VACHERON CONSTANTIN / オーヴァーシーズ
昨年リニューアルして、よりエレガントさを増したオーヴァーシーズ。今年は37mmのモデルが登場した。[自動巻き、SSケース、37mm径、215万円 問:ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755]
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GIRARD - PERREGAUX / ロレアート
昨年、創業225周年を記念して復活したロレアート。ラウンドと八角形を組み合わせたベゼルは健在だ。[自動巻き、SSケース、38mm径、112万円 問:ソーウインド ジャパン 03-5211-1791]
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