各大学は毎年、誰が一番の有名人を獲得できるか競っているようだ。2017年は米国の超名門2校が米国を代表する最高経営責任者(CEO)2人のスピーチを射止めたというニュースにも、私は驚かなかった。
ハーバード大学では、同校の中退者として有名なフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、マサチューセッツ工科大学(MIT)ではアップルのティム・クックCEOが壇上に立った。
2社の時価総額は合計約1兆3000億ドル(約142兆円)で、従業員を何千人と抱えている。両社はそれぞれのやり方で人々の生活を一変する技術を導入し、世界中で何百万人もの生活を改善(時には改悪)してきた。2人は卒業生に対し、今後何を考えるよう促したのだろうか?
両者はおそらく、まず下調べから始めたことだろう。米コメディアンのスティーブン・コルベアによる2011年ノースウェスタン大学でのスピーチを聞いたかもしれない。「これからは人に勝つのではなく、他者を愛し、奉仕してほしい。そうすれば、自分を愛し奉仕してくれる人も見つかるかもしれない」とコルベアは語った。
あるいはカーネギーメロン大学のランディ・パウシュ元教授(コンピューターサイエンス)のスピーチを聞いた可能性もある。末期の膵臓(ひぞう)がんと診断されたパウシュは卒業式で「死に神に勝つためには、長く生きるのではなく、より満たされた人生を送ることだ」と話した。
2人がスティーブ・ジョブズから受けた影響を考えると、2005年スタンフォード大学でのジョブズのスピーチに敬意を表すことを考えたかもしれない。「外部の期待や、プライド、辱めや失敗への恐れは、死を目前に全て崩れ去る。その後に残るのは、本当に大切なものだけだ」とジョブズは語った。
しかし、2人がどちらも「目的」の大切さを語ったと知ったときは、驚くと同時に喜びを感じた。コルベア、パウシュ、ジョブズが使った言葉ではないが、これこそ3人が言おうとしたことだ。