中国語(簡体字・繁体字を含む)や韓国語のほか、ベトナム語やタガログ語、タイ語、インドネシア語、ヘブライ語などの言語の翻訳需要に応えるべく、国を挙げてインバウンド政策が推進されており、その一環として機械翻訳の開発が急ピッチで進められている。
米市場調査会社が2017年から2024年までの動向について纏めた「マーケット・スタディ・レポート」によると、機械翻訳市場は2024年まで毎年17パーセントの平均成長率で市場が拡大し続け、2024年には15億ドル規模に達する見込みだという。
機械翻訳市場を牽引する企業としては、モラヴィア IT、グーグル、ライオンブリッジ・テクノロジーズ、マイクロソフト、IBM、シストラン・インターナショナルなどが名を連ねる。欧米企業が大半を占めるなか、唯一のアジア企業が韓国のシストラン・インターナショナルだ。同社は2014年、日本のNTTドコモ、音声認識・音声対話・音声翻訳に特化したフュートレックと合弁契約を締結。その後、「みらい翻訳」を設立している。
訪日外国人への対応策としては、スマートフォン、パソコンの双方に対応した2言語間の音声翻訳ツールの開発が定着してきている。例えば、ヤマハの「おもてなしガイド」(日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語に対応)はその一例だ。
現在東海道新幹線や関東の一部の私鉄の駅構内、日本国内にある2つの国際空港(成田・関西)では、「おもてなしガイド」を活用した多言語音声アナウンスの実証実験が行われている。インターネットに接続された状態でなくても、国籍を問わず音声情報を得られるようにするためだ。
その他、火災や地震などの災害時に発動する避難誘導の多言語放送(日、英、中、韓に対応)は、オフィスビルやショッピングセンター、ホテルなどの施設への導入が検討されている。
機械翻訳の開発・実用化が進むのは、観光分野のみではない。ビジネスにも新たな潮流が生まれつつある。
日本国内では「ヤラクゼン」や「みらい翻訳」など、ビジネス向け機械翻訳ツールがすでに登場している。人手に比べ安価であるにもかかわらず、従来よりも良質な訳が得られるため、コスト効率の高い機械翻訳システムの導入、または導入を検討している企業や自治体は増えてきている。