成功したシェアリングサービスにはカーシェアの「滴滴出行(ディディチューシン)」や個人間融資プラットフォームの「Lu.com」が挙げられるが、もっと多様なものが登場している。モバイル決済が日常化した中国では、新たなシェアリングサービスが、雨後のタケノコのように生まれ、最近ではその領域はバスケットボールや洗濯機まで広がっている。
人口約14億人の中国ではこの市場のスケールも巨大だ。自転車シェア大手のOfoやMobikeは、30分間で約15セントのサービスを提供し、毎日の利用者は数千万人に及ぶ。駅や街中のスマホの充電ステーションを運営する深セン企業の「Laidian(来電)」は3000カ所に設備を設置し、2014年の創業以来、利用件数は1億件を突破したとフォーブスの取材に応えた。Laidianは1時間の充電で約15セントの料金を徴収している。
中国国営の中国電子情報センター(State Information Center)の統計では、中国のシェアリングサービスの市場規模は5020億ドル(約57兆円)に到達し、14億人の中国人の少なくとも半数が、過去に一度はシェアリングサービスを利用した経験を持っている。
投資家らもシェアリングサービスの未来には強気だ。自転車シェアのOfoや Mobikeらは、既に企業価値10億ドルを突破し、出資元にはテンセントやアリババ、ロシアのDST Globalらの名前が並ぶ。
傘や洗濯機までシェアリングで利用可能
背景には中国のミレニアル世代がシェアリングサービスに前向きな点も挙げられる。ニールセンの調査では94%の中国人消費者がシェアリングを利用したいと答えているが、この数字はタイでは84%、欧州では54%、北米では52%だった。また、路上の屋台でもQRコードを用いたモバイル決済が利用可能な、WeChatペイやアリペイの普及もこの成長を後押ししている。アナリストの一人は「現代の中国ほど、モバイル決済が浸透した国は他にない」と述べた。
しかし、どんな物でもシェアリングでビジネス化できるかと言えば、実際はそうではない。上海では先日、傘のシェアリングサービスのEsanが始動したが、消費者の反応は冷やかだ。Esan では利用開始時に20元のデポジットが必要だが「20元を払うなら新しい傘を買ったほうが早い」とSNSに投稿した若者もいた。
ベンチャーキャピタルのGobi Partnersのパートナーは次のように言う。「充電関連のスタートアップへの投資は見送った。何故なら、スマホのバッテリーの持ち時間が向上すれば、このような分野は存在価値を失うからだ。また、公園でバスケットボールが借りられるサービスや洗濯機をシェアするサービスにも魅力を感じない」
しかし、この分野に対し旺盛な投資意欲を持つ投資家が多数存在することも事実だ。充電ステーションの増設はそれに関連した広告ビジネスの創出にもつながるだろう。
懐疑的な見方もある中で、ほとんどの関係者は中国のシェアリングエコノミーの未来は明るいと信じている。景気の減速が続けば、中国の若い世代は物を買うことよりも、レンタルやシェアに向かうのが自然な流れだ。自転車でもクルマでも、オフィスですらシェアする対象になるのだ。
「中国の消費者がシェアリングサービスに向かう流れは今後も止まらない」と現地のアナリストは述べた。