ここではテンセントの主要事業3分野の動向を探ってみたい。
1.MAUが9億人突破の「WeChat」
テンセントの成長を支えるのがSNSの「WeChat」だ。直近の資料でその月間アクティブユーザー(MAU)は9億3800万人に達したとされた。中国人の暮らしのあらゆる面に関わるWeChatはSNS機能のみならず、モバイル決済やゲーム、動画共有等の多彩な機能を提供する。
しかし、収益面で見るとWeChatはフェイスブックに大きな遅れをとっている。フェイスブックの1ユーザーあたりの広告売上が4ドル以上であるのに対し、WeChatの場合は1.3ドルでしかないと調査企業Arete Researchは述べている。
テンセントはここに来てWeChatのUIの改善に乗り出した。ニュースフィードや検索機能を追加し、ユーザーが他社の検索エンジンに流れることを防ごうとしている。「関係者らはテンセントがWeChatのマネタイズに関し、アグレッシブな動きを進めることを望んでいる」とHSBCのアナリストも述べている。
2. ゲームの売上はソニーや任天堂以上
調査企業App Annieによると、中国のiOSストアではテンセントのゲーム「Honor of Kings」が年明けからベストセラーになっている。HSBCはこのゲームの売上が同社のモバイル事業の売上の40%を生み出したと分析する。
グローバル市場でもテンセントはMAUが1億人に達する「リーグ・オブ・レジェンド」で知られるRiot Gamesを傘下に持っている。さらに、昨年はフィンランドのスーパーセルの株式の全てをソフトバンクから購入している。App Annieのデータではスーパーセルの「クラッシュロイヤル」は米国のiOSストアの有料ゲームランキングで1位となっている。
テンセントは売上高でソニーや任天堂、アクティビジョン・ブリザードらを抑え世界最大のゲーム企業になっている。背景にはWeChatやメッセージングサービスのQQ、中国でトップのアンドロイド向けアプリマーケットYongbaoを通じた強大なディストリビューション網を持っていることが挙げられる。
3. ストリーミング動画にオリジナル番組を投入
テンセントはオンライン動画分野にも意欲を見せている。自社のストリーミングサイトのQQ Videoに加え、外部の「Douyu TV」や「Kuaibo」にも出資をしている。
また、ハリウッド映画の「ウォークラフト」や「キングコング:髑髏島の巨神」や「ワンダーウーマン」にも資金を注入した。
さらに、テンセントはネットフリックス同様にオリジナル番組の制作にも乗り出している。直近の四半期でテンセントのストリーミングサービスの契約者数は前年から3倍以上に伸びた。しかし、この部門ではコンテンツ費用の大きさが原因で黒字化を果たせていない。
ネットフリックスも中国市場を視野に入れている。今年4月にネットフリックスはバイドゥ傘下のストリーミングサイト「iQiyi」とパートナーシップを結んでいる。