ビジネス

2017.05.14

音声アシスタント「アレクサ」がアマゾンにもたらす2つの効果

amedley / Shutterstock.com

消費者が米アマゾンの音声認識機能「アレクサ」に、小売業界の状況に関する分析結果を尋ねることは、当分はないだろう。だが、アレクサを搭載した音声アシスタント端末「エコー」に話しかけ、それを通してアマゾンで買い物をする消費者は、ますます増加している。

アレクサが小売業にもたらす影響は、主に以下の2つ点が挙げられる。ただし、これらの影響は小売業全体という以上に、アマゾンに対して大きな影響を及ぼすものと考えられる。

1. 買い物は「マクロレベル」でより複雑に

買い物や商品に関するリサーチをしたい人たちにとって、アレクサは経済学で言うところの「スパゲティボウル現象」を象徴する存在だ。つまり、オンラインでの買い物は、異なるさまざまなものが絡み合い、成り立っている。アレクサはそうした状況の中に、もう一つ新たな買い物の「ルート」を提供するものだ。

ただ、アレクサはビジュアルを伴うものではない。そのため短期的には、「買い物」に及ぼす影響は限定的なものにとどまるだろう。

2. 買い物からサービスまで全て「アマゾンで完結」する環境作り

アレクサはアマゾンの成長のカギを握る「プライム会員数の増加」と、「生鮮食品事業の拡大」という2つの側面を支援するものになるだろう。これら2つの点において成功を収めることができれば、アマゾンを利用する小売業者と消費者は、いずれも同社の「固定客」として定着することになるはずだ。

・ プライム会員

音声でアレクサに指示することで、直接買い物ができるのはプライム会員だけとなっている。それ以外のユーザーは、アレクサを通じて買い物かごにアイテムを追加することはできるが、その後はウェブサイトかアプリから、購入手続きを行う必要がある。

つまり、アレクサはユーザーらにプライム会員への登録を促すきかっけを与えるものとなる。そして、プライム会員制度は事実上、アマゾンの「ウォールドガーデン(壁に囲まれた庭)」の構築を手助けすることになる。アマゾンが管理する環境下のみにおいて、あらゆるサービスの利用がほぼ完結するようになるということだ。

アレクサはまた、アマゾンミュージック・アンリミテッド、アマゾン・オーディブル(オーディオブックを聴くことができるサービス)など、同社のその他のサービスへの加入も促すことになる。

・ 雑貨・食料品

アレクサのサブサイトは、アマゾンで購入したことがある消耗品などを再購入する際には値引きなどを提供するように構成されている。つまり、消費者にアレクサの使用を奨励するようになっているのだ。

例えば、米国ではある一定期間、ペットフードと洗濯用品、ベビー用品などをアレクサ経由で再購入する場合、5ドル(約570円)の割引を提供していた。定期的に購入するこうした商品は、特に音声指示の利用が向いている。いつも買うブランドが決まっていることが多いため、消費者は目で見て商品を探す必要がないからだ。

アレクサはアマゾンのエコシステムにおいて、デジタルメディアの売上高を後押しするタブレット端末の「キンドル・ファイア」と、雑貨や食料品をワンプッシュで購入できる「ダッシュボタン」の中間に位置するようなものだといえる。

その他の小売各社にとっての脅威は必ずしも、アレクサが大規模な買い物チャネルになることではない。アレクサが消費者に対し、プライム会員制度を通じて「アマゾンの固定客」になるべき新たな理由を提供することだ。そして、ますます向上した利便性によって、会員らのアマゾンに対する忠誠心を高めていくことだ。

編集=木内涼子

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