炭酸飲料の消費量は昨年、30年ぶりの低水準に落ち込んだ。消費者が変わる中、CGOはコカ・コーラを救えるのだろうか。
おそらく無理だろう。社会の変化は逆行不可能であり、CGOは人々に砂糖を摂取するよう仕向けることはできない。過去の成功体験だけに頼る企業では、CMOは事業戦略を救うとは限らないものの、社会的動向や流行を予測し、それに備える一助とはなり得る。
コカ・コーラは、自社ブランドに対し世界が抱くイメージの現実を直視していないようだ。困難な時期にある同社は、成長戦略に費用を注ぎ込むのではなく、自社ブランドを世界がどう見ているのかを考えるべきであって、それこそがマーケティング活動だ。
私は同社のCMO職廃止についてリンクトインに投稿したが、反応はかなり冷ややかだった。人々はコカ・コーラに対し、地球の水を奪って売りさばくような良心のないブランドだというイメージを抱いている。世界はコカ・コーラを、利益だけに目を向けて消費者の健康を考えない大企業と見ているのだ。
炭酸飲料は、肥満、アルツハイマー病、がん、骨粗しょう症、糖尿病、虫歯、心臓病の発症率を高める。ダイエット炭酸飲料であっても、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病を引き起こす。
炭酸飲料は酒、あるいはドラッグと同じマーケティングをすべきなのかもしれない。健康への悪影響の証拠が多数出ているにもかかわらず、まだ多くの人が炭酸飲料を飲んでいるが、一方で健康教育が進み消費量は減っている。
途上国ではコーラが水より安全
最貧国でコーラが消費される理由は、衛生的な飲料水よりも安く、手に入れやすいからだ。実際、発展途上国ではこのような商品の宣伝が幅をきかせている。欧米での炭酸飲料の売り上げが伸び悩んでいることを受け、コカ・コーラとペプシコは、発展途上国で事業を積極展開した。たばこ産業と同じだ。
米消費者団体「公益科学センター(CSPI)」は、インドやブラジルなどの国に焦点を置く各社の動向をまとめた報告書を発表。その中で、米国で問題となっている肥満や2型糖尿病などの食生活関連病は、すぐに発展途上国にも拡大すると指摘している。
コカ・コーラは成長戦略に力を注いでいるが、やがてブランド作りの問題に直面するだろう。人々はコカ・コーラを信頼していない。コカ・コーラは、爽快で楽しさにあふれたブランドとしてのイメージを強めようとすればするほど、人々の不信感を買ってしまう。
最近のコカ・コーラの広告では「Taste the Feeling 味わおう、はじけるおいしさを」のキャッチコピーの下、人生を満喫しながらコーラを飲む若くてスリムな女性が登場している。
コカ・コーラは今、波乱の時期を迎えている。だからこそ成長戦略に焦点を当てるのではなく、立ち止まって再評価をすべきだ。CMO職の廃止は何の得にもならない。