その企業とは、カリフォルニア州サニーベールに本拠を置くクアナジー(Quanergy)だ。同社は自動運転用センサー「ライダー(LiDAR)」の有力メーカーだ。このニュースを最初に報じたアクシオス(AXIOS)によると、クアナジーによる申請内容は明らかになっていないが、同社が選択したのは「その他」カテゴリーで、コンクリートを用いない不法移民対策を提案したと思われる。
クアナジーは昨年、固体LiDARセンサーを量産するために9000万ドルを調達しており、現代自動車やダイムラー、ルノー、日産、デルファイと資本業務提携を結んでいる。同社は、一体どうして国境警備に参加しようとしているのだろうか。
クアナジーの広報担当者からコメントを得ることはできなかったが、同社創業者兼CEOのLouay Eldadaは、2016年8月のフォーブスのインタビューで次のように述べている。
「セキュリティ事業は、自動車事業と同じくらいの規模が期待できる。将来的には、売上構成比を自動車事業40%、セキュリティ事業40%、その他事業20%にすることを目指している」
「バーチャルな壁」をレーザーで建設
クアナジーは、LiDARを監視システムにも応用している。レーダーが非金属を探知しないのに対し、レーザーは人体を含めあらゆる物体を検出できる。また、カメラを使った監視システムのように定常光に依存せず、暗闇の中でも十分に機能する。
フォーブスがEldadaとインタビューを行ったのは大統領選挙の真っ只中で、トランプが壁の建設について声高にアピールしている時だった。Eldada にクアナジーの技術をトランプに提案しないのかと尋ねると、彼は「コンクリートを打つのはまだ早い、とトランプを説得したい」と述べていた。
クアナジーのホームページによると、同社の画像技術は人体の表面曲率から個々人を識別でき、バーチャルな壁を設置して人の侵入を監視することができるという。
「我々のLiDAR技術を使えば、工場や軍の基地をはじめ、国境にもバーチャルな壁を設けることができる。この方法ならコンクリートや鉄を使った壁よりもコストが格段に安く済み、監視技術もビデオに比べて遥かに優れている。LiDARなら100メートル先の人間の指の動きまで捉えることが可能だ」とEldadaは述べている。
Eldadaによると、自動車向けLiDARの生産は年内にスタートする予定で、将来的には1台当たり100ドルまでコストを低減できる見込みだという。CBP宛ての申込書の期限は3月29日だが、現段階ではクアナジーのライバルであるVelodyneやIbeo、Continental、Boschはエントリーしていない。