こうしたなか、米連邦議会とホワイトハウスでは、医療保険制度の改革、メディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)やメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)などの社会保障制度への資金拠出の見直しを検討している。
医療費の高騰について、「何か手を打たなければメディケアは破たんしてしまう」と同協会のマシュー・ボームガートは警告する。
米国アルツハイマー協会は毎年、アルツハイマー病の医療費に関する報告書を発表している。アルツハイマー病には治療法が確立されておらず、研究資金が必要であることを政策立案者たちに訴えかけるのが目的だ。
現在アメリカでは、550万人がアルツハイマー型認知症を患っており、同協会によればその大半が65歳以上だという。そのため、国の医療保険制度にかなりの財政的負担がかかっているのだ。
「アルツハイマー関連の医療費の3分の2は、メディケアとメディケイド、つまり税金によって賄われている」とボームガートは言う。「ますます多くの人がアルツハイマー病にかかるようになり、保険制度の対象となることで、長期的な医療費が必要とされている」
特に打撃を受けているのが、国民が65歳になると適用が開始されるメディケアだ。アルツハイマーなどの認知症を患う対象者一人当たりのコストは2万3487ドル(約270万円)。認知症でない対象者のコストは7223ドル(約83万円)であり、その3倍にあたる。
さらに、米国アルツハイマー協会のデータによれば、アルツハイマー病と糖尿病を同時に患っている人は、糖尿病だけを患っている人よりも80%多く医療費がかかる。
「高齢の、あるいは高齢化する従業員を抱える雇用主にとって、アルツハイマー病が従業員の健康や企業に与える影響は深刻になりつつある」と全米健康保険組合連合のマイケル・トンプソン代表は言う。同連合にはボーイングやデル、グーグル、ファイザーなどの大手企業をはじめ1万2000のメンバーが加盟している。
「アルツハイマー病の発症を遅らせたり症状を和らげたりするために、企業や労働者が積極的に行動を起こしている。これはいいニュースだと言えるだろう」